「それは女性が選んだからでしょ?」

旧安倍政権が女性活躍推進を口にし始めたころ、男女の賃金格差について書いたら、「それはそもそも女性がゆるい職業や働き方を望むからでしょ? ゆるく働きたいけど給料は欲しいなんて、女はずるいよね」と、どこかの男性読者からいわゆる「クソリプ」を頂戴した。

なぜ日本の女性が「ゆるく」働くことを望まずとも選択せざるを得ないか、このクソリプの主は想像もできないようだった。女たちは望んでない。納得もしていない。「女はこれをするべき」と社会に用意された生き方や役割の選択肢が他にないのだと、なぜ理解できない? あきれるほどの無知をあっけらかんと披露してくるこの人物は、周りを観察し本質を見通す力のない残念な人なのだな~、仕事(も家事も当然)できないんだろうな~、しかも周りの女たちには完全に諦められ放棄されているのだろうな~、とあわれんだ。

だが、そんな残念な反応が普通に散見されたのが、7~8年前のこと。ジェンダーギャップ指数が「150数カ国中120位あたりのビックリ低空飛行、先進国中でダントツの最低!」と毎年言われ続け、UAEより韓国より中国より低いの何のと聞かされ、意識させられ続けて8年、さて、あれから日本はどれだけ女性活躍が進み、状況は変わったただろうか。

変わっていないのである。びっくりのあまりアゴが外れる。

働いていない女性など、ひとりもいない

世間では、当事者の女性の間ですら「働く女性(ワーキングウーマン)」という言葉がまかり通っているが、わざわざ「働く男性」とは言わないところに、重大な偏見が隠れている。

この場合の「働く」は報酬をもらう労働だけを指していて、無償の家事労働やケア労働を無とみなしているからだ。

世界が男性優位にできあがっている現実を圧倒的なデータ量によって暴き、英国「サンデー・タイムズ」ナンバーワンベストセラーとなったキャロライン・クリアド=ペレスの『存在しない女たち』(神崎朗子・訳/河出書房新社)は「働いていない女性などひとりも存在しない。存在するのは、報酬をもらえずに働く女性だ」と指摘する。

 世界的に見ても、無償労働の75%は女性が担っており、女性が毎日3~6時間を費やしているのに対し、男性は平均30分~2時間にすぎない。(中略)男性による無償労働時間が最も長い国(デンマーク)の男性たちでさえ、女性による無償労働時間が最も短い国(ノルウェー)の女性たちに比べれば、無償労働時間は短い。

女性の雇用労働における就労率が増えても、それに応じて男性の無償労働が増えたかといえば、そうではない。つまり、たんに女性の全体的な労働時間が増えたのだ

男性が無償労働をより多く行う場合でも、無償労働の大部分を占めている日常の家事をこなすのではなく、子どもの世話など楽しめることだけをやる場合が多い。(中略)また男性は、もっと個人的で、煩雑で、精神的な疲労をともなう高齢者の世話には、ほとんど手を出さない。(中略)要するに、世界中どこでもほぼ例外なく、女性は男性よりも長く働いているのだ。(同書より)

この本で、データは証明する。女性は男性よりも長く働いているのだ。「無償で」

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