新しく問題設定することで「価値のある発信」になる

そして価値のある情報発信とは、(先程の例で言えば)目立っている彼らの存在に対しYESかNOかを述べるのではなく、たとえばその対象を「読む」ことで得られた刺激から、自分で問題を設定することだ。単にあいつらは目立っているので、叩いて/褒めてやろうと考えるのではなく、その対象の投げかけに答えることで、新しく問題を設定することだ。

宇野常寛『水曜日は働かない』(ホーム社)

たとえば彼らの掲げた「ボーダレス」というコンセプトから現代のメガシティにおける公共はいかに再設定されるべきか、とか民主主義のもたらす「世界に素手で触れられる」感覚の中毒性はSNSの時代にどう変化し得るのか、とか自分の手で新しく問いを設定することで、世界に存在する視点を増やすことだ。

「書く」ことから「読む」ことにさかのぼることの意味はここにある。単に「書く」ことだけを覚えてしまった人は、与えられた問いに答えることしかできない。しかし「読む」訓練を積むことで、僕たちは「書く」ときに問いを新しく設定し直すことができる。

既に存在している問題の、それも既に示されている選択肢(大抵の場合それは二者択一である)に答えを出すのではなく、新たな問いを生むことこそが、世界を豊かにする発信だ。僕はそう考えている。

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