はじめてのライブペインティングで安藤忠雄に言われた言葉
【大宮】実際に絵を描くことになったのは、とあるハプニングから。私の舞台装置的な作品がある大きなパーティーで展示されることに。ですが、打ち合わせで、担当者の方から、相談されたんです。
「実は明日、ライブペイントをする海外のアーティストがこれなくなってしまった。すごく困ってる! エリーさんしかやってくれそうな人いない! 助けて!」と。
【原田】ライブペインティングとは、その場で絵を描くパフォーマンス。そのとき、絵を描いていたんですか?
【大宮】(大きく首を振って)まったく。「小学校の写生大会で、消防自動車を描いた以来ですよ?」って答えたんです。そうしたら「それでもいい」って。もうやるしかないって。
そしたら会場にいらした、(建築家の)安藤忠雄さんが、「もうワインでも飲んで描くしかないよ」っておっしゃってくださり。着物姿でがぶ飲みして描いたら、ウケたというか(笑)。
絵もたまたま良かったそうで、ベネッセの会長で、瀬戸内国際芸術祭のプロデューサーでもある福武總一郎さんの所蔵になったという(笑)。
言葉で治療する「ムンテラ」のような絵
【原田】上手く言葉にできないんですが、エリーさんの絵って、見ていると力をもらう感じがする。絵にパワーがある。絵を描いているときは、何かに筆を持つ手が動かされているみたいな感じなんですか。
【大宮】うーん、そこに私はいないという感じです。私は無になっていて、自然界からいただくパワーを転写して絵にしているだけです。今回、患者さんに見守られながら描きました。
海から太陽が昇る絵は、生きるエネルギーと、今という喜び、そして天から無限に降り注ぐ愛を転写しようと決め、一心不乱に描きました。
それを見ていた患者さんが、別れ際、こう言ってくれました。「希望の光をありがとう」。泣けました。
【原田】エリーさんと話をしていると、ムンテラっていう言葉が頭に浮かんでくる。元になっているのはドイツ語の「ムントテラピー」。ムントとは口のこと。言葉で治療するという意味です。
昔はよく「医者はムンテラが大事だから」と言われました。手術をする、薬を投与するのはもちろんですが、医療従事者は、患者さんを癒やす、力を与えることが大切。エリーさんの絵を見て患者さん、とりだい病院の人たちが元気になってもらえれば嬉しいですね。