45年前、「生ビールを家でも」から始まった
長年続けているCMの効果もあり、「大人が飲むビール」といったイメージが定着した黒ラベルだが、かつては「大人」とは似て非なる「おじさん」のビールという印象が強かった。ビールには「玄人向け」「大衆的」といったポジティブなイメージがあるが、それが若者や女性を遠ざけていた面もある。黒ラベルはどうやって「大人の生」へと脱皮したのか。歴史を紐解いてみよう。
黒ラベルが誕生したのは1977年。当時、家庭用は熱処理のラガーが一般的だったが、「飲食店で人気の生ビールを家でも」というコンセプトで開発された。原点のコンセプトはいまも継承されており、「コロナ禍で飲食店に行けなくなり、外で飲むようなおいしい生ビールを家で飲みたいというニーズをとらえたことも、黒ラベル好調の一因」(齋藤氏)という。
メジャー感、インパクト勝負、品質重視と“迷走”を続け…
だが、その後はブランドのメッセージが揺れた。85年には、「世界がうまいと言い始めた」とメジャー感を訴求したと思えば、92年はCMにとんねるずを起用して「大人になったら黒ラベル」と発信。「大人」という部分は現在のブランディングに通じるところもあるが、「おじさん」のイメージと紙一重だ。
97年には原点に戻って「ビヤホールの生」を訴求したが、一転、2000年は豊川悦司と山崎努が温泉卓球を繰り広げる「LOVE BEER?」CMを展開。味よりもインパクト勝負に出た。かと思うと、06年には「品質は、畑から」と打ち出して、おいしさと安心安全を訴求する。サッポロの企業コンセプトを、フラッグシップブランドである黒ラベルに投影したブランディングだった。
時系列で並べてみると一貫性のなさが分かるが、ブレていたことは齋藤氏も認めている。「黒ラベルは、時代に合わせて訴求する価値やコミュニケーションを変えてきました。それによって時代時代に爪痕は残せたのかもしれませんが、中長期でブランドの軸を打ち出せず、黒ラベルといえばこうだという確固たるポジショニングができていなかった」