迷走期を経て、ようやくブランドイメージが固まった

味の訴求をやめると同時に、中高年男性に絞ったターゲティングもやめる。大胆なゲームチェンジだったが、それゆえ営業現場の混乱や不安は大きかった。「現場からは『性や年齢を指定してくれないと売りづらい』という声があがっていました。

しかし、層を絞ると結局、他社と同じになってしまいます。ここで軸がブレると、いままでの二の舞になる。前任から引き継いだビジョンを台無しにしないよう、意志を持って全国の営業担当たちに説明を続けました」

サッポロビール「黒ラベル」ブランドマネージャーの齋藤愛子氏
撮影=プレジデントオンライン編集部

組織内でブランドの統一を図っただけではない。注目は、中長期で軸を持ち続けたことだろう。冒頭、黒ラベルの販売数量は15年から現在まで7年連続前年比増と紹介した。ということは、10年にリブランティングしてから軌道に乗るまで5年要した計算になる。1977年の発売開始から数えると、迷走期を経て実に38年だ。ブランドマネージャーが2~3年で交代する中でも軸が揺らがなかったことが、リブランディングを成功に導いたのだ。

「ブランド軸の固定=マンネリ」とどう向き合っていくか

目先の環境変化や数字に振り回されることなく、一貫して同じブランディングを続ける。それが現在の黒ラベル人気につながったことは間違いない。ただし、変化のないメッセージはマンネリと背中合わせだ。今後の展開が気にかかる。

「大人の世界観を徹底することについては今後もブレないようにやっていきます。一方、アプローチのやり方は、もっと攻めてもいい。例えば4月から大人エレベーターの世界観を深掘りして伝える音声メディア『黒ラヂオ』を始めました。黒ラベルの世界観を体現するグッズを販売するECサイト『THE SHOP』もスタートしています。もともと私は前の部署でデジタルマーケティングをやっていました。同じメッセージでも、新しいメディアを活用して届けることで、黒ラベルに刺激を与えていきたいですね」

「大人エレベーター」が始まって13年目。当時大人に憧れた若者も「おじさん」と呼ばれる年齢に差し掛かってきた。また次の世代の消費者が憧れる大人の世界を、新しいメディアも使いつつ伝えていけるのか。継承と革新のバランスが難しいだけに、齋藤氏の匙加減に引き続き注目していきたい。

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