この気持ちを常に忘れないために、今でも村上さんのTwitterには、以下の投稿が固定されている。
「俺の夢。16年前に亡くなった娘がいる。いつか俺が死んで天国に行った時、娘に「お父さん頑張ってたね」と言ってもらえる人生を送ること。そのために、子供達が夢を持って生きられる日本をつくる。会社を年商100億超まで成長させ、社員と共に、地域を元気にし、秋田から日本を変えて行く」(2020年11月18日投稿)
会社を立ち上げて事業を大きくし、秋田を元気にする。村上さんに迷いはなかった。
磨かずに、ただ洗う
それから約8年後、38歳になった村上さんは、満を持して会社を立ち上げる。
社名のホワイトシードは、若者の才能(白い種)からいろいろな芽が出るような会社にしたいという思いが込められている。
メインの事業は、クルマの洗車やコーティングなどを行うカーディテイリングだ。村上さん自身がクルマ好きということ以外にも、かつてカーディテイリングの会社で働いていた際に感じた問題意識も動機となっている。
「新潟にいた頃、当時の職場の先輩がカーディテイリング会社の社長を紹介してくれました。めちゃめちゃクルマをきれいにできる人だったので、いろいろと教えてもらいました。ただ、半年くらい経って手入れしたお客さんのクルマが戻ってくると、傷がついているんです。せっかくきれいにしたのに残念だと社長に伝えると、『いやいや、傷がつかなかったらもう来ないぞ。また俺たちがやればいいんだよ』と言うのです」
ただ、村上さんはその考え方にはあまり納得がいかなかった。
磨いてきれいにするのはクルマの塗装を削っていることでもあり、いずれは全部剝がれ落ちてしまう。だったら磨かない方がいいのではと、村上さんはその時に気がついた。
その後、村上さんは秋田に戻ってきて、大手自動車メーカーの関連会社で整備士の仕事に就く。その際に購入した新車で実験してみようと、いっさい磨かずに丁寧に洗うだけにした。その方法を11年間続けた結果、クルマに傷がつかないことが証明された。
一方で、コーティングもワックスも塗らないで洗っていると、塗装が痛むこともわかった。そうした成果を体現したカーディテイリングの会社を設立しようと考えたわけである。
公開から半月後、突如アクセスが殺到
村上さんは実家の隣をオフィス兼作業スペースにして、2012年12月に事業をスタート。洗車サービスに加えて、洗車用品の販売なども行った。次第に地元のクルマ好きに知られるようになり、じわじわと顧客もついてきた。