分厚い『全国ホテルガイド』だけが頼りだった時代

今の時代、ホテルを予約するのはとても簡単になった。パソコンやスマホでホテルの予約サイトを開けば、すぐに残りの部屋数もわかるし、料金だってプランごとに明記される。そのままボタンひとつで決済までできてしまうのだから、電車での移動中やランチ中にサクッと予約を完了することもたやすい。

ワニブックスNewsCrunch編集部『Have a nice ドーミーイン  「一泊すると住みたくなる」最高のビジネスホテル』(ワニブックスPLUS新書)

しかし、1990年代まではそれはもう手間のかかる作業だった。そもそもインターネットが普及するまえの時代だから、予約サイトなんて存在しない。当時は会社の各部署に『全国ホテルガイド』なる分厚い本が支給され、出張が決まると、各々がその本を見ながらホテルを選ぶ流れになっていた。

インターネットがないから、予約するには電話をするしかない。今だったら人差し指でボタンをタッチするだけで終わる作業が、まずホテルに電話をし、出張の日時を伝えて、その日に空き部屋があるかどうかを確認しなくてはならない。

そして重要なのは料金の確認。前出のホテルガイドに1泊あたりの料金は載っているものの、それはあくまでも目安でしかないし、ネットと違って情報がリアルタイムでアップデートされるわけではないから、本の発行から時間が経っていると、値段が大幅に変更されている、ということも珍しくはなかった(この本自体がそこそこ高いので、毎年、最新版が支給されるなんてこともなかったのだ)。

同僚たちの書き込み情報に現れた「異変」

さて、本来だったらアップデートされないはずのホテルガイドだが、じつは出張が多い部署ほど、日々、進化を続けていた。なぜなら、出張で泊まった同僚たちが「このホテルはいい」と二重丸を付けておいてくれたり、「1泊5000円と書いてあるけれど、今は6000円」とか「朝食は美味しくないからプランに入れないほうがいい」などと最新情報やアドバイスを赤ペンでどんどん書き足していってくれたからだ。

ここまで読んでおわかりのとおり、これは現在のホテル予約サイトの口コミ情報の原型である。ただ、こちらは書いている人が同僚だから、より信憑性も高いし、なんなら本人に話を聞くことだってできるので、最強の口コミ情報だった。

そしてある時、それらを凌駕する口コミ情報が出てきた。