NATO加盟申請の機運が高まる

現在、フィンランド国民の感情が一番わかりやすく可視化できるのはNATO(北大西洋条約機構)加盟に関する世論調査だろう。

フィンランドのNATO加盟は、冷戦後にも盛んに議論されており、その後もロシア情勢に不穏な気配があるたびに話し合われてきた。

フィンランドは、NATOには非加盟を貫きながらも1994年5月にはNATOの「平和のためのパートナーシップ(PfP: Partnership for Peace)」には参加している。

このように加盟ではなく、協力という形にとどめることでロシアを刺激しないよう努力してきた中で、今回のウクライナ侵攻は「これ以上まだ顔色を窺う必要があるのか」というところにまで到達した。

2月26日には、フィンランドのNATO加盟に関する国民投票を求める市民ボランティアが、5万人の支持声明を集め、議会に提出した。同28日にはフィンランド国営放送の委託で実施された調査で加盟を望む回答は過半数に。4月11日に民放MTV3が実施した調査では68%にまで膨らんだ。

そして、

ついに5月12日にはニーニスト大統領とマリン首相は共同声明を発表し、NATO加盟について「速やかに行う」と表明した。

フィンランドにけん制をかけるロシア

ただ、実際に加盟が受理されるまでには数カ月かかる見込みだ。加盟プロセスに国民投票が必要か否かについてもまだ不明だ。(フィンランド国家の議員の半数以上が加盟に賛成してはいる)

4月21日には、ロシア外相はフィンランドとスウェーデンのNATO加盟動きにけん制をかける発言をした

スウェーデン外相が「NATO加盟の結論が出せないかもしれない」と発言するなど、まだ加盟時期は二転三転するかもしれない。とはいえ、隣国スウェーデンが加盟せずともフィンランドは加盟という意志が固いのは間違いないだろう。

「それで、ロシアに対して日本はどうするの?」

これらの報道を受けて、とあるフィンランド人男性に問われた。「で、日本はどうするの?」と。筆者は「どうするもこうするも日本には軍隊がないから」と答えると怪訝けげんな顔でみられた。

反対側のロシアの隣国として何かもっとすごい反応を期待していたのだろう。拍子抜けしたような間が開いたので「第二次世界大戦で負けてからの名残で、日本にはまだ米軍基地があり、自衛隊があるだけ」だと告げると、非常に驚いていた。