自由化で進められた「発送電分離」で情報連携に弊害

電力会社の電力の需要予測を困難にした理由は他にもある。

自由化で電力会社は発送電分離を迫られた。自由化前のように、発電から配送電、小売りまで一社で一貫して手掛けていた体制では、小売り・営業部門から企業や家庭などの電力の消費動向がリアルタイムにあがり、それに応じて発電・送電部門が燃料調達や発電所の稼働を調整できた。

しかし、自由化後は発電、配送電、小売りがそれぞれ別会社になった。「各社間の情報連携がうまくいかず、供給責任をどこが担うのか、責任の押しつけ合いになってしまった面はある」(前出の大手電力幹部)という。

寒波はお隣の中国や韓国も襲った。さらに中国はいち早く経済が回復したためLNGの需要が伸びている。韓国も石炭火力からLNG火力への転換を進めている。また、東アジアの需要が急に跳ね上がったために米国から来るLNG船がパナマ運河で渋滞したり、豪州やマレーシアのLNGプラントが故障したりするなど「不運」も重なった。

新電力の1月分電気料金が通常時の2倍以上になる恐れ

一連の全国的な電力需給の逼迫は自由化の目玉である新電力各社の経営も直撃している。自前の発電所を持たない新電力が「商材」となる電力を調達する卸売価格が高騰しているためだ。

今年に入り、1月分の電気料金が通常時の2倍以上になる恐れも出てきた。LNG不足で火力の発電量が減ったため、大手電力が卸市場に出すガス火力の電力も減るためだ。寒波の影響で需要が増加し、スポット価格が高騰した。

日本卸電力取引所(JEPX)の指標価格は1月中旬に一時1キロワット時あたり150円台と、12月上旬と比べて約25倍に上がった。一般的に家庭の電気料金は1キロワット時あたり20円台の場合が多い。新電力が販売する電力を全て市場調達に頼る場合、単純計算で電力を1キロワット時売るたびに100円超の赤字となる水準だ。

一部の新電力は市場価格を電気料金に直接反映する販売プランを採用している。ダイレクトパワー(東京・新宿)や自然電力(福岡市)によると、1月分の電気料金は通常時の2倍以上になる可能性があるという。