ホンダはカーボンニュートラルの実現に開発資源を集中するとして、2021年シーズンをもってF1から撤退した。だが、自動車業界に詳しいマーケティング/ブランディングコンサルタントの山崎明氏は、「本音と建前を駆使する欧州メーカーの動向をみるかぎり、ホンダの判断はやや“正直にすぎた”のではないか」と指摘する──。
F1サウジアラビアグランプリ、#63ジョージ・ラッセル
写真=dpa/時事通信フォト
2022年3月25日、サウジアラビアのジェッダ・コーニッシュ・サーキットで行われたF1サウジアラビアグランプリ、#63ジョージ・ラッセル(イギリス、メルセデス-AMG・ペトロナス・F1チーム)。

8年後、本当にBEV100%になるのか

世界はガソリンやディーゼルといった内燃機関搭載車からBEV(電気自動車)へとかじを切っており、特に欧州メーカーは積極的といわれている。

ここ数年、欧州メーカーからは次々とBEVの新型車が発表されており、近未来のBEV戦略を大胆に発表しているブランドも多い。

メルセデスベンツ、アウディ、ボルボなどが2030年あたりを目途に100%BEV化を宣言している。つまりPHEV(プラグインハイブリッド車)も含め、内燃機関を積んだ車を作ることをやめる、ということである。

2030年といえば8年後である。さて、その時間軸で本当にそうなるのだろうか。各社の発表内容と動向を詳しく見てみたい。

あくまで「市場が許容すれば…」の努力目標

メルセデスベンツは2030年までに新車販売をBEVのみにすると発表している。2025年以降に導入される新プラットフォームはすべてBEV専用となるという。

現状では昨年のメルセデスベンツのBEV比率は2.3%にとどまり、PHEVを加えても11%にすぎない(*1)。確かにBEVの車種ラインアップは増えているのだが、たいして売れていないのである。

メルセデスベンツの製品で、ドイツの2021年プラグイン車(BEV+PHEV)販売トップ20に入っているBEVはスマート・フォーツーだけである(メルセデスベンツブランドでは1車種も入っていない)(*2)。はたして8年後にBEV100%など達成できるのだろうか。

実は発表時の文言にはただし書きが付いており、「市場が許容すれば」と付け加えられている。つまり、100%BEV化する準備は進めるが、実際にそうなるかどうかは需要次第、ということなのである。

*1 Mercedes-Benz foresees EV-only production lines within a few years
*2 26% Of New Vehicle Sales Plugin Vehicle Sales In Germany In 2021