誰も保証しない「完全BEV化の未来」

アウディは、2026年以降に発売する新型車はすべてBEVとし、内燃機関搭載車の生産は2033年に終了すると発表している。

現時点ではアウディはメルセデスベンツよりBEV化が進んでおり、2021年のBEV比率は4.9%である(*3)。しかし逆に考えれば、20台中19台はまだ内燃機関搭載車なのだ。

こちらもやはりというべきか、メルセデスベンツ同様にただし書きが付いており、内燃機関搭載車の生産終了タイミングは顧客の指向と法体系、そして充電環境の整備状況によって変化しうる、としているのだ。

つまり、需要が十分BEVにシフトしなければ2033年以降も内燃機関搭載車の生産を続ける、とも捉えられる。

*3 In 2021 Audi Increased All-Electric Car Sales Beyond 80,000

販売規模に左右されるメーカーのスタンス

ボルボは2030年に100%BEV化を達成するとしている。この判断は、内燃機関搭載車を規制しBEVを優遇する法体系と充電ネットワークの急速な整備によるBEVへの需要の高まりによる、としている。

つまり、ボルボはBEVに対する需要が大きく増える、と読んだうえでこの判断をしているというわけだ。

またボルボは、BEV化と同時に販売の仕組みも抜本的に変更し、BEVモデルはオンライン販売のみにするとしている。つまり販売サービス体制でも内燃機関搭載車を排除することで効率化を進めようということだ。

ボルボは販売台数が70万台と限定的なので、内燃機関とBEVの両面体制を取ることは困難で、伸びしろのあるBEVに特化したほうが効率的な経営ができる、と判断したのだろう。

思うほど伸びないBEV需要

さて、BEVを作っても買ってくれる客がいなければ始まらない。BEVに対する需要はどうなっているのだろうか。

メルセデスベンツとアウディのお膝元、ドイツでの2021年の新車販売に占めるBEV比率は14%である。前年から大きく伸ばしているが、直近の2022年2月のデータも14%で伸びが鈍化しているようだ。

ドイツでは、車両価格4万ユーロ以下のBEVに対し一律9000ユーロ(約120万円)の補助金を出しており、小型・低価格なBEVなら同等のガソリン車より割安で購入することができる。さらに自動車税も2030年まで免除される。そのほか、市街地中心部でのBEV専用駐車スペースやバスレーンの走行許可などの優遇策もある。

このシェアはこの補助金や優遇策の賜物なのだ。逆にいえば、それだけのことをしてもこの程度のシェアなのである。