2030年でも4台中3台は内燃機関

BEVの最大の欠点は充電に時間がかかることで、就寝中に充電できた分だけで運用している範囲ではいいが、出先で電気が足りなくなったときの充電時間は内燃機関搭載車に慣れた人には耐えがたい長さだ。

近距離用途の需要では運用コストが安く、自宅充電が可能なBEVのベネフィットは大きく、今後EVは普及していくと思われるが、すべての車がBEVに置き換わるのは難しいだろう。

果たして2030年までにBEVはどの程度普及するのだろうか。

IEA(国際エネルギー機関)がBEVのシェア予測をしているが(*4)、それによればもっとも普及が進むと考えた場合のシナリオで2030年のグローバルBEVシェアは25%としている(保守的なシナリオの場合は11%)。

デロイト社の予測でも2030年に26%と、IEAとほぼ同じ予測をしている(*5)

2021年の世界BEVシェアは5.9%(*6)なので、9年間でBEVは4~5倍に増えるという予測である。

車の燃料キャップ
写真=iStock.com/deepblue4you
※写真はイメージです

確かにそれぐらいは増えると思われるが、裏を返せば2030年でも4台中3台は内燃機関搭載車ということになる。ボルボのような比較的販売規模の小さなメーカーは100%BEVという戦略が取れるかもしれないが、メルセデスベンツやアウディというメジャーなブランドで100%BEV化すると販売台数の縮小は避けられないだろう。

*4 Global EV sales by scenario, 2020-2030
*5 Electric vehicles Setting a course for 2030
*6 Global EV Sales for 2021
筆者注:BEVのみの比率を算出するためには上記リンク先のデータから計算が必要です。

「フォーミュラEから次々撤退」が意味するもの

このような予測の中、メルセデスベンツやアウディは本当に「本気で」100%BEV化を考えているのだろうか。本音は別のところにあるのではないか。それを垣間見る動きが存在する。それはモータースポーツ界での動きだ。

モータースポーツの世界でもEV化は進んでいる。最も象徴的なのはBEVレーシングカーで競うフォーミュラEで、F1のように世界各地を転戦している。

2014年から始まり、自動車メーカー各社もこぞって参戦した。メルセデスベンツもアウディも参戦したが、アウディは2020/2021年シーズンをもって撤退、メルセデスベンツも2021/2022シーズン後の撤退を発表しているのだ(BMWも2020/2021年シーズンを最後に撤退している)。