工場現場にやってきた女性初の工場長
そこへ、女性初の工場長として赴任。
赴任先は最初が名古屋工場、次が栃木工場で、いずれも単身赴任だった。ミッションは、製造が需要に追いついていない現状を立て直すこと。不慣れな環境で、日々起こる問題を解決しながらモチベーションを上げるという難問に、心身をすり減らす日々が始まった。
「赴任したてのころは、私に立て直せるのかと、とても不安でした。でも、お客様に迷惑をかけないようきちんと製品を供給したい、現場の皆が疲弊せずに働ける環境をつくりたい、その一心でがんばりました」
毎日工場内を2万歩以上歩いた
「現場には当初、女性の工場長に立て直しなんて無理だろうという思いもあったのではないでしょうか」
だが、最終的には「意外にやるなと思ってくれたみたい」と笑いながら振り返る。
「製品を作って出荷する、という当社の源泉の部分に関われ、それを毎日あたり前のように取組んでいるみなさんからは逆に多くのことを学ばせていただきました」
現場を立て直すうえで、いちばん大事にしたのは「鼓舞」だった。毎日2万歩以上も工場内を歩いて、現場の仕事が顧客や会社にとっていかに重要かを皆に伝えて回った。プチプチグッズが雑誌に載ればその誌面を見せ、商品に対する世間の反響をフィードバックするよう心がけた。
「あなたの仕事は重要だよ、認められているよって伝えることが大事だと思ったんです。中には、そういった声掛けでモチベーションが上がって仕事への取り組み方がガラッと変わった人もいました」
工場で皆と一緒に働いた経験は、その後の商品開発やマーケティングにも大きく役立った。原料と製品のバランスを考えて戦略を練れるようになったうえ、製造現場とのやりとりも仲間同士のようにスムーズに進むようになった。