AKB48グループに在籍中にIWAを開業したのは、今後のキャリアを考えての決断だった。このまま芸能界だけで生きていくのは厳しいと悟っていた。その時のことを内田さんの母親で、IWAの店長を務める裕美さんは回想する。
「眞由美が卒業をちょっと考えていて、AKS(現Vernalossom)の社長と面談があったとき、辞めたらどうするのと聞かれて、飲食店をやりたいと言ったみたいです。商売をやりたいんだろうなとは思っていましたが、まさか焼肉とは思わなかった。それはびっくりで。お父さんに相談したら、やるしかないと言うので始めることにしました。こんなに続くとは思いませんでした」
実は内田さんの実家が東京・八王子で焼肉店を経営している。また、内田さんの祖父は精肉店を営むため、IWAもそこから原材料を調達している。広義の意味では家族経営であることが安心材料としてはあった。
とはいえ、5000万円という決して安くはない借金を抱えて、IWAは14年4月にスタートした。店名は、内田さんがコント番組で「岩」役を演じたことが由来だ。
「アイドルに会える焼肉屋」の絶頂と苦悩
オープンしてすぐに、IWAは「アイドルに会える焼肉屋」として話題となった。
当時は予約制ではなかったため、入店待ちに長蛇の列ができたこともしばしば。オーナーとはいえ、まだ現役アイドルだった内田さんは店にいることは少なく、基本的には裕美さんとスタッフで切り盛りしていた。それでも大繁盛して1~2年目の年商は1億円を超えた。
「金土日は予約がないとダメで、さらに2時間制。平日にたまたま入れてラッキーという感じでした」と内田さんは絶頂期を振り返る。
15年8月に内田さんはAKB48を卒業。芸能事務所に所属しながら、焼肉店オーナーという二足のわらじを続けた。しかしながら、店の業績は徐々に陰りが見えてくる。
AKB48ファンが中心だったため、なかなか新規顧客の開拓ができなかった。いくらファンと言っても毎日焼肉を食べに来るのはハードルが高い。オープンから3年目に突入したころには、最初のようなにぎわいは去っていた。
「3、4年目がすごく苦労しました。うまくいってないからモチベーションが落ち、私自身もブレていました。AKB48のファンは来るけど、アイドルというキーワードで売っていていいのかな? 飲食店としてちゃんとやったほうがいいのでは、と悩みました。何度もやめようと思いましたね」
「だったら、IWAで働けば?」アイドルを辞めた親友に送ったLINE
そんなIWAを支えていたスタッフがいる。元AKB48の野中美郷さんだ。14年4月にAKB48グループを卒業して、芸能界も引退した後、すぐにIWAで働き始めた。きっかけは、1通のLINEだった。