トヨタでさえものづくりからの転換に四苦八苦
ところが今は180度、環境が変化してしまいました。
「市場はシュリンクする一方で、何をどうすれば商品が売れるのかわからない」
「テクノロジーサイクルが驚くほど早まり、自分のスキルがどんどん陳腐化していく」
そんな不安を抱えて仕事をしているサラリーマンは多いと思います。
なぜこうなったのかというと、ものづくり神話に囚われているのと、グローバル化に対応できていないからだと思います。
自動車業界は、まだものづくりの発想が通用している業界ですが、トヨタですら、そこからどう転換していくかで、のたうち回っているように見えます。ガソリンとエンジンが電気とモーターに替われば、部品点数が激減します。制御もデジタルになり、ソフトウェアがより重要になっていきます。そうすると、人手がいらなくなって、今まで20万人必要だった従業員が10万人で十分といったことになります。これも“有形資産”から“無形資産”への転換の一種と言えます。
日本では正社員の人数を減らすのは非常に難しいので、10万人で十分となっても、会社は残りの10万人の面倒を見なければなりません。
これは勝手な憶測で、少々よけいなことを述べたと思いますが、おそらくトヨタなどは、必ずしもものづくり神話に囚われているわけではなく、今の体制を転換するのがあまりにも難しくて、捨てるに捨てられないというのが現実だと思います。
中国でパワーワードになっている「OMO」
日本ほど、ものづくりが洗練されている国はありません。特に「部品」の単位になると、極めて優れた製品が生み出されてきます。それを全部捨て去る必要はありません。
僕は日本より、中国での方がむしろ有名人で、請われて多くの中国企業のコンサルティングをしていますが、今、中国でパワーワードになっているのは、「OMO(オンライン・マージズ・ウィズ・オフライン)」という言葉です。「オンラインとオフラインの融合」という意味で、ハードとITを融合させて、新しいビジネスモデルをつくれということです。
中国人のビジネスマンは、「中国にはものづくり企業がある。IT企業もある。だから、両者がぶつかれば、大きなビジネスチャンスになる」と言います。中国は世界の工場としてものづくりの主役になりましたが、もうその先を見据えているのです。
だけど、日本ではこういう話はほとんど聞かないんですよ。中国を始めとするアジア諸国の台頭の前に日本の製造業は縮小を余儀なくされています。こうした現実をもっと真摯に受け止めて製造業の新たな枠組みを創るべきでしょう。