米国の利上げに加えロシアのウクライナ侵攻の影響を受け、株式市場は値動きの大きい状態が続いている。個人投資家は現状をどう把握し、どう対処すればいいか。投資ブロガーのりんりさんは「過去60年間の地政学的イベントを検証してみると、株式市場は最初のニュースにネガティブに反応することがあるものの、地政学的な売りは通常短期間で終わり、その後の12カ月間のリターンは長期平均リターンとほぼ同じであったということがバンガードの調査でわかっています」という――。
ロシア経済暴落のイメージ
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米国のインフレはこれからどうなる?

米国の株式市場はウクライナ情勢の影響を受けて株価の値動きが激しくなっています。この影響を考える前に、まずはこれまでの米国株式市場の状況を整理しておきましょう。

2年前の2020年2月19日コロナウイルスによるパンデミックをきっかけに米国株式市場は暴落。3月23日に底をつけるまで、米国を代表する株価指数のS&P500は約34%下落しました。しかし、3月23日に底をつけて以降、S&P500は大きな下落もなく最高値を更新し続け、今年2022年初にはコロナショックの底から2倍以上となる4818をつけるまで上昇しました。

この間、パンデミックによる景気後退や経済へのダメージを回避するため、FRB(米連邦準備理事会)は、異例の金融緩和政策を実施。株式市場の長期停滞や、深刻な景気後退の回避には成功したものの、徐々に米国のインフレが加速。当初は、インフレは一時的と見られていましたが、米国のインフレは根強く高止まりを続けるようになりました。

米国はインフレ退治と金利正常化に向けて動き出した

変異株やサプライチェーンの問題など、コロナショックによって引き起こされた問題の一部はまだ完全には解決していないものの、米国経済や労働市場が回復してきたこともあり、このインフレを退治するため、FRBはいよいよ3月15、16日のFOMCで0.25%利上げを開始し、インフレ退治と金利正常化に向けて動き出しました。

元々、今年年初以降、パウエルFRB議長の利上げを示唆する発言や、利上げや金融引き締めがもたらす株式市場への逆風を懸念して、米国株式市場の株価は軟調となっていました。

そんな中、2月24日に始まったロシアのウクライナ侵攻のニュースを受け、市場はさらに混乱。S&P500は年初から11.9%下落(3月10日時点)。ナスダックも11月19日につけた最高値から20%以上下落し、弱気相場入りとなりました。