監督は練習が終わると速攻で帰る

【藤田】負担が大きすぎて保護者の中から不平不満の声が出るチームも多いそうなんですが、多賀でもそんな声が出ることはありますか? 出た場合はどんな対処をされていますか?

【辻】早いうちにLINEで相談を受けて、相談を受けたら必ず家まで行ってすぐに解決を図りますね。

【藤田】家まで行くんですか?

【辻】家に行ったらその家のことがよく分かるんですよ。うちでも年に2、3回そういうことがあります。それ以外は一切保護者とは関わらないようにしていますけどね。

【藤田】基本的にはグラウンドで解決する?

撮影=株式会社apricot.h、宇田川淳

【辻】そうですね。

【藤田】保護者との距離感、関わり方はすごくしっかりされていますよね。

【辻】そうですね。僕は17時で練習が終わったら速攻で帰りますしね。保護者がグラウンドに残っていても。

【藤田】それはなぜですか?

【辻】練習が終わった17時以降に誰が残って練習しているとか、していないとか、誰が一生懸命で、誰がそうじゃないとか、そういった先入観を持ちたくないんです。

【藤田】「あいつ頑張っていたから試合に出してあげよう」とかって思っちゃいますよね。

【辻】でもグラウンドからすぐに帰る子も、もしかしたら家で練習を頑張っているかもしれないですよね。

【藤田】みんなを平等に見るために敢えて練習後のグラウンドを見ない。なるほどなぁ。

【辻】もっと言うと練習に来ていない子も平等に見ているつもりです。グラウンドに来なかっただけで家でやっているかもしれないですから。

【藤田】そこがすごいなぁ。

保護者付き合いはグラウンドの上だけで十分

【藤田】辻さんは保護者と宴席を共にしないらしいですね。お酒は大好きなのに(笑)。

【辻】そうですね、大好きですけどね(笑)。

【藤田】それはそこで保護者と親密になったりすると選手起用に情が介在してしまったりするからとか、そういうことですか?

【辻】いえ、そうではないですね。野球を教えているんですからお付き合いはグラウンドだけで十分なんですよ。大人達のお酒の場だけじゃなくて、例えばチームの子ども達みんなでレクリエーションというか、ボーリング大会しようとかキャンプしようとか、そういうのはやらないし、やらないでくださいって言っています。

【藤田】夏にキャンプとかやっているチームも多いと思いますけど、辻さんがそこまで嫌がられるのはなぜなんですか?

【辻】子ども達は野球をしたくて来ているんですし、グラウンドだけで楽しいことも親睦も全部完結します。もちろん仲の良いチームメイト2、3人が遊びに行くのはいいんですけど、5年生だけで集まってプールに行こうとか、みんなでご飯を食べに行こうとか、全員集まって何かをやるのは止めてくださいというのは毎回言っています。

【藤田】みんなで集まるのがダメなんですね。