全国大会で優勝経験のある滋賀県の「多賀少年野球クラブ」では、審判を務めた保護者に1試合につき100~150円の「手当」を支払っている。その狙いはどこになるのか。お笑いコンビ「トータルテンボス」の藤田憲右さんが、監督の辻正人さんに聞いた――。(第3回/全3回)

※本稿は、藤田憲右『多賀少年野球クラブに学びてぇ!』(インプレス)の一部を再編集したものです。

審判員
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遠征があっても月3000円以上の部費は徴収しない

【藤田】多賀部費っていくらなんですか?

【辻】2年生以上は月2000円です。1年生以下が1000円。また、2年生以上は部費とは別に保護者会費を1000円集めています。ですから2年生以上だと月に合計3000円になりますね。

【藤田】例えばマクドナルド杯とか全国大会出場が決まった場合は別途集めたりするんですね。

【辻】いえ、集めないですよ。

【藤田】え!? じゃあ保護者が応援に来る場合は自己負担ですか?

【辻】いえ、部費の中から出していますよ。

【藤田】いやいやいや! 月2000円の部費から保護者の旅費・交通費まで出したらお金足らないでしょ!

【辻】足りない分はお中元にそうめんを売って工面しています。

【藤田】お中元? そうめん? それは「これを買って多賀少年野球クラブを応援してください」的な?

【辻】そうなんです。はじめは全国大会へ出場する資金を集めるためにスタートしたんですけどね。

【藤田】多賀の地元の名産なんですか?

【辻】いえ、これは多賀とは全然関係のない地域のものなんです。それを製造元から仕入れて、お中元の時期に合わせて3000円で売るんです。

【藤田】必要なお金は稼ぐという発想がもうすごいです(笑)。

【辻】でも保護者にこれを広めてもらうことをどう伝えればいいのか、はじめは考えましたね。部費を稼ぐためとはいえ、やっぱり負担をかけてしまいますからね。ですので、お中元の少し前の時期に「もし親戚や知り合いでお中元を用意しようとしている人がいたら、それをこのそうめんにしてもらえないか話してみてくれませんか?」ってお願いして。それが一番はじめでしたね。

【藤田】そうめんを買ってくれる人の立場からしたら「ふるさと納税」みたいなものですよね。どうせ何かお中元を贈るなら知り合いの学童野球の応援につながるものを贈ろうってことですもんね。

【辻】そうなんです。

そうめん販売で年200万円の活動費を捻出

【藤田】製造元と知り合いだったからそんなことができたんですか?

【辻】いえ、実は製造元の方から声をかけていただいたんです。はじめは「ホンマに大丈夫なんか?」と不安もあったんですが、とりあえず一回やってみようかと細々とやっていたんです。でもそのそうめんが美味しいので年々売り上げが上がっていったんです。1つ売れたら1000円のマージンがもらえるんですけど、今は常連さんも増えて年に2000箱売れるようになりました。

【藤田】じゃあ年間200万円の活動費が稼げているんですね、そうめんで。

【辻】そうですね。今では全国大会に出ても出なくてもよく売れていますね(笑)。

【藤田】なるほど。面白いやり方ですね。

【辻】その他にも自分達の活動費は自分達で捻出しようということでいろいろやっています。町有地の草むしりの仕事を委託してもらって子どもと保護者とやったりとか、アルミ缶を集めて売ったりとか。アルミ缶集めも応援してくれる地元の業者さんが相場よりも高い値段で買い取ってくれたりして、年間にすると15万円くらいになりますからね。

【藤田】高校球児が遠征費を稼ぐために正月に郵便局でアルバイトするのと同じ感覚ですね。

【辻】僕も高校時代は「餃子の王将」でバイトしましたね(笑)。

【藤田】いいですね、そうめんを仕入れて売って、儲けを活動費にあてるって。さすが近江商人ですね(笑)。