保護者のストレスフリーを考える

【辻】保護者も「みんなやりたがっていますよー」とか言うんですけどね。「みんなって誰や?」「行きたくない人は『行きたくないです』とは言えへんもんですよ」って僕は言うんです。親子で集まってご飯を食べに行こうとか、ご苦労様会をやろうとか、仲良くなるためのレクリエーションとか親睦会とか、そんなの全員が行きたいと思っているはずがないんですよ。

撮影=株式会社apricot.h、宇田川淳

【藤田】なるほどなるほど。行きたくない人のことも考えてくださいよってことなんですね。それが「保護者のストレスフリー」にもつながるということですね。

【辻】そうなんです! 行きたかったら全員に声をかけずに行きたい人2、3人だけで行ったらいいんですよ。チームを巻き込まないでください、学年を巻き込まないでください、ということなんですよね。

【藤田】なるほどね。確かに「やりましょうよ!」「行きましょうよ!」って言うの、大体いつも2、3人ですもんね。

【辻】だから日本一になっても祝勝会も何もやっていないんですよ(笑)。

【藤田】でも保護者の中には、さすがに日本一になったお祝いくらいはやりたいって言ってくる人もいますよね? そういう時はどうやって断っているんですか?

【辻】「ご自宅で家族でお祝いしてください」って言いますね。

メンバー外の子の保護者の気持ちもくみ取る

【藤田】すごい徹底ぶりですね(笑)。日本一をみんなで一緒に分かち合いたいという気持ちもちょっと分かる気もしますけど。

【辻】でもね、そう思うのはメンバーに入っている子の保護者ですよね。

【藤田】あー、なるほど。

藤田憲右『多賀少年野球クラブに学びてぇ!』(インプレス)
藤田憲右『多賀少年野球クラブに学びてぇ!』(インプレス)

【辻】9人の保護者だけですよ。それ以外の保護者のことを考えていますか? ということなんです。

【藤田】確かに! すごく納得できました。ちなみに指導方針が変わる前からそうしているんですか?

【辻】いえ、昔は優勝とかした時はグラウンドの隅にブルーシートを敷いて「よぉし! お前ら肉食わせたる!」って言って吉野家の牛丼をみんなで食べていましたね。

【藤田】そこは焼肉じゃなくて牛丼なんですね。確かに肉ですけど(笑)。

【辻】でもその時も試合に出られなかった6年生の子のお母さんが来なかったりしてね。自分の息子が出られなかったのは悔しいでしょうし、それなのにみんなで喜びながらご飯を食べるのは気が引けたりとか、いろいろ思うことがあったんでしょうね。そういう思いをする人もいるんだって気づかされてからそれすらも止めてしまいました。

【藤田】保護者にめちゃくちゃ配慮されていますね。試合に出られなかった6年生の保護者がいて、ベンチ入りすらしていない3年生の保護者がいて、それでもそのあたりに配慮せずに普通に祝勝会とか打ち上げとかしていますよね、ほとんどのチームは。確かに試合に出ていない子の保護者からしたら「うちの子は出ていないから行きません」って言えないですよね、なかなか。空気を読んで嫌々でも参加しますもんね。

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