朝型と夜型は遺伝で決まっている

生き物には、太陽の光などの時間を推測する手がかりがなくても、体内で刻む独自のリズムが存在します。これが体内時計で、日本人の場合は平均24時間10分だといわれています。

平均より長い人も短い人もいますが、外の世界の1日24時間とのあいだで生じるズレは、主に日光を浴びることで調整しています。

人間だけでなく、生き物はみなこうした体内時計を持っていて、それに従って体温を上げたり下げたり、または、ホルモンの分泌をはじめたり終えたりと、様々な生命活動を行っているのです。

そして実は、このサイクルがはじまる時間や終わる時間は、個人ごとに大きく異なります。

すると、どういうことが起こるのでしょうか? 身体能力や仕事の処理能力といったパフォーマンスがもっとも上がる「ゴールデンタイム」も、個人によって違ってくるということになるのです。

朝型、夜型といった相違は、このような体内時計の個人差によるものです。

加えて、重要なことがもうひとつあります。朝型や夜型といったクロノタイプは、基本的には「遺伝」で決まっています。

「どうしても早起きが苦手で……」という人がいますが、それはもしかしたら、「遺伝的に夜型だから」なのかもしれません。ちなみにわたし自身は、典型的な夜型人間です。

年齢とともに朝型にスライドするのはごく自然なこと

クロノタイプは、遺伝の他にも年齢や性別、光を浴びる時間、その光の量といったものの影響を受けて決まります。遺伝によって決定づけられるのは、約50%といったところです。

例えば、午前中に浴びる自然光が強く、その量が多いほど朝型化します。2013年のアメリカの研究では、たとえ夜型の人であっても、自然のなかでのキャンプ生活を1週間続け、午前中からしっかり太陽の光を浴びることで、ぐっと朝型に近づけることができると報告されています。

また、10代後半から20代前半頃には、本来は夜型ではない人もライフスタイルが夜型になる傾向にあることもわかっています。もともと夜型の人だと、この時期には就寝時間や起床時間がさらに後退します。

実際に、「若いときはいくらでも夜更かしができた」「朝まで遊ぶのも平気だった」という人も多いのではないでしょうか?

逆に、中年くらいの年齢では、朝早くから目が覚めるようになり、冗談めかして「もうおじさんだから」「もうおばさんだから」なんて口にするようになりますよね。これには、年齢によるクロノタイプの変化が影響しているのです。

しかも面白いことに、この変化はサルやマウスなどの人間以外の動物にも見られるものです。つまり、年齢を重ねるにつれて朝型にスライドしていくのは、ごく自然なことだといえます。

年齢を重ねてから朝早く目が覚めてしまうことに悩み、「若いときのようにもっとしっかり寝たい」と各医療機関を受診する人もなかにはいるのですが、年齢とともに早起きになるのは正常なことなので、睡眠薬を使うなどして無理に長時間寝る必要はありません。

それから、現時点では理由ははっきりしていないのですが、男性に比べて女性のほうが、総じて朝型が多い傾向にあります。これはおそらく、性ホルモンの影響ではないかと推測されています。