社員は家族、会社の利益は社員のがんばりの結果

それにしても、なぜここまで社員にオープンにしているのか。「社員は家族」というのが権藤社長の答えだ。家族に隠し事はしないという、さも当然といった風情である。さらにその視線は、社員自身の家族にも注がれている。

田宮寛之『何があっても潰れない会社 100年続く企業の法則』(SB新書)

「自分がどんな会社に勤めているのか、数字的なことも含めてきちんと説明できたほうが、ご家族を安心させられるでしょう。そのためもあって、ただ数字をオープンにしておくだけでなく、毎年、決算期には私から社員に向けて決算報告をしています。そのほうが真実味が増しますから」

会社の数字が理解できれば、今の自分のがんばり方も見えやすい。明確な目標を立て、それに向かって着実に努力することができる。そして会社の利益は社員のがんばりの結果として還元される。

会社は株主のためにある、というのが昨今の企業に顕著な姿勢だが、小泉産業の意識は、より社員に向けられているようだ。それは、経常利益の何割かを業績賞与として、固定賞与に上乗せするかたちで社員に還元している点にも現れている。

経営者感覚を育てるという社員教育の根幹にあるのは、ただ努力を惜しまず会社に貢献できる人材になれ、という考えではない。社員全員に「アイ・ラブ・コイズミ」になってほしいとの願いだという。会社の数字を理解し、損失も利益も「自分ごと」として捉える。そのなかで培われる愛社精神が、同じ志を持つ者の集合体としての会社の絆を強くするのだ。

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