仕事の「答え」は、一つじゃない
家庭科のテストで「冷凍食品ばかりの食事で不足がちになるものは何でしょうか? 」という設問に、ある生徒が「愛情」と答えた。教師が想定した正答は「ビタミン類」だ。家庭科という判断基準では間違っていても、異なる視点から見ると、「愛情」という答えは正しい。小学校低学年の理科のテストで「氷が溶けたら何になるでしょうか?」という問いに、「春」と答えた女子生徒の話がかつて話題になった。理科の基準では不正解でも、国語の設問なら秀逸な答えだ。
業務にも似たような側面がある。マニュアル通りの答えが求められる「作業」なら、「ビタミン類」や「水」で正解だ。しかし、創意や工夫が求められる「仕事」なら、「愛情」や「春」という答えのほうが望ましい。実際の現場では、この2つを混同し、「仕事」においても決まった答えがあると勘違いしている人が少なくない。まずは、こうした勘違いが起きている会社の特徴を挙げよう。
思った成果が出ない、ダメ会社の特徴
(1)手順を教わる人が多い
仕事にも「正解」や「方法論」があると思い込み、答えや手順を教えてもらおうとする人がいる。上司が手順を教えると、本人は仕事ができたと勘違いする。こうした仕事のやり取りが続くと、自分で考えなくなり、毎回、他人に手順を仰ぐため、いつまでも自立できない。こうした人の決まり文句は、「やり方を教えてもらっていないから、できません」だ。
(2)大勢の会議でアイデアを出そうとする
決まった手順でしか仕事ができない人は、多面的な見方ができず、創造的な発想が苦手だ。そのためアイデアが必要になると、大勢の人を集めて会議をするのが好きだ。ブレーンストーミングをやりたがるが、その正しい進め方と遵守すべきルール(例えば、提案されたアイデアをその場で批判しない)を知らずに、会議を進行してしまう。こうした人の決まり文句は、「何かいいアイデアはないかな?」だ。
(3)合議制や多数決で物事を決めようとする
プロジェクトの責任者や担当者が、しっかりとしたビジョンや自分なりの答えを持たずに仕事を進めるため、創造性を要求される場面になると、自身で判断できない。そこで大勢を集めた会議が開かれ、合議され、多数決で物事が決まる。また自身に結果責任が及ばないように、多数決を選ぶ場合もある。よくある責任回避だ。
こうしたプロセスを経ると、最初はユニークで魅力的な企画が、誰でも考えつく内容に変質してしまう。一つの答えに修練しようとする合議制や多数決では、創造的な解決策は生まれない。こうした人の決まり文句は、「今回の企画は、みなさんが賛成したこの案を採用します」だ。
(4)過去に経験した方法にこだわる
現在までに経験した仕事(その多くは作業だが)の方法や手順に慣れてしまい、新しい分野の仕事や、ゼロから立ち上げる新規事業になると、思考停止し、行動できない人材が存在する。営業部門でもルートセールスしか経験のない担当者は、新規顧客の開拓や新規ルートの深耕には二の足を踏む。こうした人の口ぐせは「やったことがないから、できません」だ。
次に、作業と仕事をしっかり区別し、社員が創意と工夫を持って仕事を進められる会社にするにはどうすればいいか。4つのポイントを紹介しよう。