社員全員で決算書を読み、経営者感覚を育てる
会社という組織にとってもっとも大事なのは、会社を継続的に成長させ、会社を潰さないようにすることだ。そのための第一の課題はもちろん、しっかりと収益を出すことであり、それには社員が経営者感覚を持つことが重要である。
小泉産業では、「社員全員が決算書を読めるようにする」ということを通じて、社員一人ひとりの経営者感覚を養っているという。
新入社員にいきなり決算書を見せても何もわからないだろうが、会社の数字は小さな数字の集積だ。会社全体の数字は各事業部の数字の集積であり、各事業部の数字は各課の数字、各課の数字は各チームの数字、そして各チームの数字は各個人の数字の集積である。
このように会社の数字を個人レベルにまでブレークダウンしたところから、数字の見方、考え方を教えているという。
たとえば1つの事業部で年間3億円の売上、5000万円の営業利益という数字は何を意味するのか。売上とは何か、営業利益とは何か、あるいは経費とは何かなども含めて、数字の意味するところを現場で教える。そして、目標達成のために自分が所属する部は、課は、チームは、そして自分自身はどれくらいの数字を出せばいいのかを考えさせる。
小さな数字がわかれば、大きな数字も読みこなせるようになる
数百億円というグループ全体の巨大な数字は具体的にイメージしにくくても、自分が所属する事業部くらいならば、たとえば「自分が使った交通費は経費として利益から差し引かれる」というレベルから考えられる。そうしているうちに、みな次第に大きな数字も読みこなせるようになっていく。
「一社員であっても経営者感覚を持って仕事に臨め」というのは、よく聞く言葉だ。だが小泉産業では、それを企業風土として浸透させ、個人任せにするのではなく、所属部署にかかわらず手取り足取り数字の見方を教える。こうして現実的に一人ひとりが経営者感覚を持てるようにしているのだ。
数字の教育を施す以上、会社の数字はグループ全体の決算書から事業部ごとの収支まで、すべて全社員に公開しているという。だから、たとえば自分が所属するA営業部と隣のB営業部とでは何が違うのかといった比較をすることもできる。それにより「負けてられない」と奮起することもあるだろう。