新タイプ入試で入学した生徒たちには共通点がある
それにしても、学校にとってはかなり手間のかかるこのような入試を行う理由はなんなのでしょう。その背景には、大学入試改革から連なる教育改革の影響があります。実社会では、明確な答えのない課題に対して、分析し最適解を導き出し、チームになって解決する力が求められます。そのときに必要になるのが、新学習指導要領でもうたわれている、主体的に学ぶ力や学んだことを生かそうとする姿勢です。
一部の私学では国の教育改革に先駆けて、そうした能力の育成を重視したプログラムを学内で実施し、入試にも反映してきました。そして、そういう学校の新タイプ入試で共通しているのは、思考力はもちろんのこと、物事に主体的に取り組む姿勢や協働する力を積極的に評価しようという点です。
実際、新タイプ入試で入学した生徒の特徴を聞くと、「自分で考え・決めて・行動する」「こちらが設定した枠にとどまらない大きさを感じる」「積極的・意欲的な生徒が多い」といった高評価がどの学校からも上がってきました。
桐朋女子中学校・高等学校(東京都調布市)は、1967年から「口頭試問」という独自の入試を行ってきた思考力入試の先駆け的な学校です。これは、知識の量を測るのではなく、初めて学習する内容にも積極的に取り組み、理解したことを表現する力を測るために、最初に40分ほど授業を受け課題に向き合い、その後複数の教員が試問します。こうした入試を経て入学してきた生徒について、入試広報室は「高度な受験の解法テクニックを持っている訳ではないが、大学受験に際しても、自分の頭で理解し『これだ』というものが見つかると非常に伸びるように感じている」と言います。
時代の変化と共に、入試の形も変わっている
前回の記事で書いたように、日本の大学入試は大きく変わってきており、今後いわゆる欧米型の総合型選抜入試の割合が入学者の半数以上となっていくと言われています。そのときに、自分は何が好きで、何が得意で、社会でどう生かしていきたいのか、そのために何を学ぶのかを自分の言葉で語れることが必要になります。
もちろん一般入試で頑張る子がいてもいい。だけど、「何のために学ぶのか」という問いを持たずに、ただ偏差値の高い学校に入れればいいという考えで勉強をしているだけでは、入学後に息切れしてしまう可能性もあります。
時代の変化と共に、与えられたことをこなす力より、主体的にものごとに取り組む姿勢を育むことが重要視されている中、新タイプ入試の広がりは、私学における教育の質の変化を示していると言えるかもしれません。
今は、新タイプ入試での入学者の割合は全体の10%~25%くらいですが、ペーパーテストだけでは測れない子供たちの能力や意欲を多面的に評価する入試がもっと広がっていくことは、子供たちの未来を開く鍵になるのではないでしょうか。