男性は50代から急激に「友達ゼロ」が増える

会社の人間関係は、会社の内集団だからこその関係性にすぎず、会社を辞めれば、外集団の無関係な人間となります。以前勤めていた会社だからといって、IDカードもないのに入所することはできませんし、連絡をとったところで相手も迷惑するでしょう。何十年も勤め上げたところで、退職した瞬間に、それまでの人間関係はその瞬間に消滅するのです。

ここまで読んで、「いやいや、俺は大丈夫。俺には会社以外の友達もたくさんいるから」と思っている今は現役の男性もいるかもしれません。しかし、その友達は、あなたが会社を辞めて、何の肩書もない状態になっても付き合ってくれるでしょうか? そもそもその人と知り合ったのは仕事絡みではなかったですか? 連絡をとってくる時は何かしら仕事の頼み事があったからではないですか? そもそも、知り合いと友達は違います。フェイスブックで、登録上友達数が何千人いたとしても、それは単に「いいね」をくれるだけの関係でしかありません。

年代別に「友達がいない割合」を調査したものがあります。

男性は、50代から急激に「友達ゼロ」が増えていきます。70歳以上でさらに友達の数が減るのは、数少ない友達自体が死んでしまうということもあるからですが、それでも男性は、加齢と所属の有無とともに、友達がゼロになっていくのです。

【図表】友達が一人もいない割合

日本の高齢男性特有の「妻唯一依存症」

要するに、ほとんどの男性には、仕事を辞めた後も付き合いが続く人間関係はほぼいません。深刻なのは、現役の時に友達がいると錯覚している人ほど、仕事を辞めた途端に「俺は友達がいなかったんだ……」と突然思い知らされ、大きな絶望を感じてしまうことです。

身も蓋もない言い方をすれば、退職後の高齢男性の末路は、友達もなく、趣味もなく、生きがいもなく、やることもなく、さりとて何かを始めようとする意欲もなく、ただ毎日テレビを見て過ごすだけの抜け殻となります。

その最大の被害者が配偶者(妻)です。今まで会社だけに依存してきた夫が、退職後は今度は妻に依存するようになるからです。私はそれを高齢男性特有の「妻唯一依存症」と名付けています。

そうなってしまった夫は、分かりやすくいえば幼児と一緒です。妻の買い物についていこうとするし、やたらと構ってもらおうとするし、ちょっとでも相手にしないと不機嫌になって怒り出したりします。唯一の依存先である妻に見捨てられることを極端に恐れるからです。