唯一無二のオモシロ芸人

狂人・劇団ひとり。芸人で、あの人のことをつまらないと言う人は一人もいない。唯一無二の絶対オモシロ人間だ。

一度「腐り芸人」に、僕よりも後輩のある芸人が来た。その後輩が話したのは、映画の撮影で、とある俳優にいじめられたというエピソードだった。後輩はリアルに喋ってくれ、僕たちも、面白く聞いたのだが、その内容は単純に許せない類のものだった。

スタジオはかなり盛り上がったが、その俳優というのが誰もが知るビッグネームというのもあり、そこの部分はまるまるお蔵入りとなることになった。

スタッフ含め、その場にいた全員がそれを薄々承知の上で収録していたので、そこまでのショックはなかった。ただ、一人を除いて。

収録後、ひとりさんが佐久間さんとコソコソ話していた。

「何とかして、今日のあの俳優の話を放送できないものだろうか?」

クレイジー過ぎる。絶対に無理に決まっている――そう思いながら、僕は真剣に顔を向かい合わせる二人の横を通り過ぎた。あの話が単純に面白いからなのか、それとも、後輩がいじめられた悔しさからなのか。

分かったのは、ひとりさんだけは本気だったということだ。

他の番組での失敗とはワケが違う

シェイク・ヒロシという芸人だけをとりあげた収録回もあった。現場では90分くらいカメラが回っていた。面白かったように僕には見えた。けれどオンエアは5分ほどだった。これぞ、仁義なき戦いだろう。

「『ゴッドタン』に出られる、ラッキー!」なんて単純なことではない。

『ゴッドタン』への出演は決してチャンスなわけじゃない、むしろピンチなんだ。

あの番組に出て失敗するのは、他の番組や舞台でどんな失態を演じるより惨憺さんたんたる結果が待っていることを自分の収録の前に知った。

番組プロデューサーの芸人愛が垣間見えた瞬間

2021年の2月に「佐久間宣行のオールナイトニッポン0」のなんとスペシャルウィークのゲストに呼んで頂いた。

スペシャルウィークというのはラジオの聴取率を測る大事な週のことで、この回の数字が良ければ番組は続くだろうし、悪ければ終わってしまうこともある。

そんなとても大事な回に、平成ノブシコブシが二人揃って呼ばれた。普段、テレビなどではコンビで揃うことが珍しいということなのか、ラジオリスナーの興味を引く布陣なのか、佐久間さんご自身が興味をもってくれたのか、理由はよく分からないが突如スケジュールに入った。

その放送では、「腐り芸人」の成り立ちや、「次世代腐り芸人」の話などを聞いた。

なぜ相方の吉村を『ゴッドタン』に呼ばないのかと佐久間さんに聞けば、「ちゃんと正面で頑張っている芸人に対して、『ゴッドタン』でよくやるように、その人のキャラをひっくり返すことは申し訳なくてしたくないから」と言っていた。

吉村に逆張りするのはもう少し後でいい。真っ直ぐ走っている人に変なちょっかいを出して、迷惑を掛けたくないという、芸人愛も聞けた。