お笑いコンビ・平成ノブシコブシの徳井健太さんは2018年まで腐っていた。しかし、『ゴッドタン』(テレビ東京/毎週土曜25時45分)の出演を機に、その毒は「腐り芸人」という笑いに変わり、再ブレイクのきっかけとなった。そのいきさつを、徳井さんの著書『敗北からの芸人論』(新潮社)より紹介する――。(第1回)
千鳥のノブさんが語った『ゴッドタン』のすごさ
千鳥のノブさんと何年か前に飲んでいた時、こんな話をしてくれた。
「ちょっと前に『ゴッドタン』のスタッフさんと飲んだんやけど、その時にな、“申し訳ないんだけどうちの番組は、1週間のうち3日間はみっちり、企画について打ち合わせをしてるんだ”って言うんや。3日間もやで? “もちろん他の番組だって必死だろうし、芸人ならどの番組でも頑張らなきゃいけないのは分かるんだけど、『ゴッドタン』は絶対に面白い台本を自分たちスタッフがみんなで作ってるから。それを超えてもらうためにも、安心して死ぬ気で砕け散る覚悟でやってくれ”って」
それからしばらくして、ゴッドタンから「腐り芸人」という企画が僕の元にやってきた。僕は、死ぬ気でやった。砕け散る覚悟はしていった。つもりだ。
そんなこんなで、今回は人気深夜番組『ゴッドタン』について。
ネタを書いているわけでもないのに、なぜか白羽の矢が立った
僕とインパルス・板倉さん、ハライチ・岩井とで結成された“腐り芸人”。
テレビのバラエティに馴染めず、心に闇を抱えてしまった芸人が本音をぶちまける企画だった。
僕はふたりとは違う。浮いている。なぜなら、元々が売れていないからだ。
板倉さんは芸歴2年ほどで『はねるのトびら』に出演していたし、岩井はハライチとして、速攻でテレビで売れた。しかもふたりとも賞レースで結果を残している。
対して僕ら平成ノブシコブシはネタで評価されたわけでもないし、そもそも僕は自分でネタを書いているわけでもない。それでもなぜか僕に白羽の矢が立った。
それだけでも死ぬ気でやろうと思ったが、以前ノブさんから冒頭に書いた『ゴッドタン』の話を聞いていた手前、スタッフさんの熱量や意気込みを勝手に感じ、その重さを勝手に背負っていた。