両国を引き離す唯一の可能性は「ロシア民主派」

では、ロシアが中国から離れることはいかなる状況であってもありえないのか。じつはそうとも限らない。可能性は非常に低いが、ロシアが中国から離脱する可能性は一つだけある。

それは、ロシア国内で革命的な変化が起き、親欧米派、民主派が政権を取ることである。ロシア民主派のリーダーだったネムツォフはすでに「プーチン政権は親中政権である」と警鐘を鳴らしている。

ロシア民主派の人びとであれば、ロシアの立ち位置は欧米陣営、自由民主主義陣営であるべきだと考えている。彼らは西洋の基本的な価値観を共有しており、中国共産党のやり方を受け入れないだろう。したがって、中華秩序からの離脱を実行しようとするはずだ。

ロシア民主派の支持率は5%と極めて低い

しかし、ロシアにおいて民主派が政権を取る可能性は非常に低い。プーチンが築き上げた現在の独裁体制において、彼らの居場所は全くない。また徹底的なテレビ・プロパガンダによって、ロシアの民主派には完全に売国奴、西洋の手先というレッテルが付いている。

今のロシアにおいて民主派の支持率は1割にも満たず、せいぜい5パーセント程度である。ロシアで教養が最も高いモスクワ市内であっても、民主派の支持率は20パーセント程度で留まっている。この状態では、プーチンの代わりに政権を取ることはできない。

グレンコ・アンドリー『プーチン幻想』(PHP新書)

ロシアにおいて民主派が支持を得るのは、一般人の意識がひっくり返るような天変地異が起きないかぎり不可能である。しかし天変地異が内発的に起こることはありえず、外からの力でプーチン体制を崩壊に追い込まなければならない。したがって少しでも中国からロシアを離脱させるような手法で、中国追従のプーチン体制を崩壊に近付ける必要がある。

以上のように、日米がどんなに頑張っても、プーチンを中国から離れさせることはできない。プーチンは、自分がアメリカと喧嘩しているようなポーズを見せられるなら、いくらでも習近平に頭を下げるだろう。彼にとってはアメリカと対等に対立している(ように見える)状態が、喜びや満足感を与えるからだ。この理想的な状態を自分から変える必要はない。

価値観の面においても、プーチンのKGBの価値観は中国共産党の価値観と共通している。プーチンが西洋の首脳と分かり合うのは不可能であるが、中国共産党の幹部とは十分に分かり合える。日本人は「プーチンは反中である」という何の根拠もない幻想は捨て、中華秩序の一員であるプーチンのロシアと現実的にどう接するべきかを、しっかり考える必要がある。

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