起点をいつにするかでデータの見え方は変わる
しかし、ちょうど子どものおやつの時間が来たので、あなたは皆を家に帰らせたいと思っているとしましょう。その場合あなたは、実際に潮は来ておらず、お城が壊れるのを待っていてもムダなので、さっさと車に乗り込んだほうがよいと、子どもを説得する必要があります。どうすればできるでしょうか?
とても簡単です。データの起点を決めればよいのです。子どもにはこう言いましょう。「見て、3時50分に潮は26メートルのところまで来た。でもその後50分間、そこまでは来なかった。3時50分以降は、潮は満ちてこなかったよ」と。
この言い方は、潮が同じ高さまで来ることはなかったという点においては真実ですが、誤解を招きます。もし3時50分以外の時刻を起点に選んでいたら、確実に上昇しているからです。
3時50分の異様に大きな波(高速モーターボートが通ったからかもしれませんし、元気な地元のクジラかもしれません)はデータから突出していますが、低いところから高くなっていくという全体の傾向は変わりません。
ティーンエイジャーの自殺率は本当に増えているのか
自分の子どもにそんなことを言うなんて、あなたはかなりの変わり者に違いありません。しかしデータの扱いで、人々はしょっちゅうこれと同じことをしています。
2019年の「サンデー・タイムス」のトップ記事は、「ティーンエイジャーの自殺率はこの8年でほぼ倍になった」と言明しましたが、その記事では、さっきの想像上の父親がビーチでやったのとまったく同じことをしていました(ただし逆向きに)(※3)。
その記事では、イングランドとウェールズにおけるティーンエイジャーの自殺が記録上最も少なかった2010年を起点にしていたのです(※4)。2010年を起点に測定すれば、まさにどの年も自殺率は上昇します(あるいは、2010年以前のどの年を起点に取ってきても、自殺率は下降します)。