「反戦」以上に目立つプーチンへの怒り
多くのプラカードに書かれたスローガン。「戦争反対」「キエフに自由を」「ウクライナに栄光を!」しかしそれ以上に目立つのはプーチンに対するメッセージだった。
「プーチンを止めろ」「ウクライナから出ていけ」「プーチンはファシストだ」プーチンにヒトラーのひげをつけた写真を持つ男性。ここには書けないような汚い言葉も叫ばれていた。
これを見れば、これがロシアに対してというより、プーチン大統領自身に対する強い抗議ということがすぐに分かる。
前出のパウロはこう憤る。
「プーチン大統領はウクライナが元々ロシアの一部だったと言っているが、それは嘘だ。ウクライナはずっと独自の言語と伝統を持った独立した国だったのに、プーチンはそれを制圧して政権を変えようとしている。このままでは国のアイデンティティーが失われるだけでなく、自由の国から独裁の国になってしまう」
彼らの抗議行動の最大の目的はこうしたメッセージを世界に伝えることだ。
母国ウクライナでは、ゼレンスキー大統領はじめウクライナ軍そして一般人までが、とても太刀打ちできそうにないロシアの大軍に勇敢に立ち向かうことでリスペクトを集め、彼らを支えようとする国際社会の結束が劇的に強まっている。
ニューヨークのウクライナ人も自分たちがその一端を担いたいと必死なのだ。
世論調査では「68%のロシア国民が支持」だが…
「ウクライナを攻撃してごめんなさい」というプラカードを持ったロシア人も見かけた。
ロシア人女性カティアは「ロシア人はウクライナ人と共に戦います」というプラカードを持っていた。「ロシア人として申し訳ない。多くのロシア人もウクライナ人をサポートしていることを知らせたい」と語った。
ロシアの政府系機関「全ロシア世論調査センター」は2月28日、「68%の国民がウクライナへの『特別軍事作戦』を支持している」とする世論調査結果を発表した。しかし、彼女はロシア人のほとんどがウクライナ侵攻に反対していると見ている。
彼女はこう説明する。
「プーチン大統領は、ウクライナをファシストから救うために戦うのだと言っている。多くの人はコントロールされたメディアの影響でそれを信じている」
しかし、背後にはそれ以上のサイレントマジョリティがいるというのだ。
「ロシアは言論の自由がなく、政府を批判することは犯罪行為。だからプーチン大統領やこの戦争に反対していてもそう発言することは危険すぎてできない。数年前には、政府が『フェイクニュース』とみなした報道を禁じる法律が成立した。ロシア政府に関するどんなコメントも許されなくなった」