気持ちを切り替えなければ、誰でも不安に押し潰される

奥様は、10年以上の仕事のブランクがあったものの幸い正社員雇用が見つかったとのこと。喜ぶべきことではあるが、奥様が仕事と家事育児のバランスを保てるのか心配でしょうがないとのことでした。

4月以降の家事分担や生活時間の変化に対して、どのようになるのかわからないがゆえの漠然とした不安。これがCさんの症状の原因と推測されました。

数回の面談でCさんは、自分は4月以降の生活のマイナス面ばかりに焦点を当ててしまい、常にそのことに意識が向きすぎていたと気が付きました。

心のマイナス要素となりえる不安な気持ちは、誰もが抱えています。そして、「対処できること」については対処することが大切です。一方、「対処できないこと」もあることを認識し、後者については、考えてもプラスにはならないと気持ちを切り替えなければ、誰でも不安に押しつぶされてしまいます。

Cさんには、もしも不安ばかりが頭に浮かんでしまったときは、対処できるものは対処した上で、「不安は減らさなければならない」という考え方をまずは捨て、「自分の中のポジティブな感情=4月以降の家族との生活での楽しみなこと」も考えるなどしてみてはいかがでしょうか、それだけで心の持ち方は大きく変わってきますよと提案しました。

写真=iStock.com/Hana-Photo
※写真はイメージです

不安な感情に悩んだら、ポジティブな感情に目を向ける

不安とは、「未来」に対する「恐怖」であり、「漠然」としたものです。人間は、過去に対しては不安を感じません。過去の出来事の結果として、未来に不安を感じることはありますが、過去の出来事そのものには不安を覚えません。不安は未来に起こる“かも”しれないことであり、不安に思っていることは、まだ起こっていないことなのです。そして往々にして実際に起こらないことの方が多いものです。

不安に上手に対処するためには、この認識の上で不安を生じさせている根本的原因、つまり自分の心の状態を改善することが大切です。

新学期を控え、誰もが不安な気持ちを感じるのはしょうがないことです。特に、この2年間のコロナ禍での経験から、我々は今後起こり得ることを漠然と想像できるようになってしまいました。

しかし、不安というネガティブな感情は、どんなに改善しても、マイナスがゼロにしかならず、楽しい気持ちや幸せなどのポジティブな感情にはつながりません。私の産業医面談の経験上、不安に上手に対処している人は、不安の解決に頭を悩ませている時間をさっさと捨てて、よりポジティブな感情にフォーカスするという選択肢を無意識に採れている人が多くいます。

繰り返しますが、不安な気持ちに四六時中支配される必要はありません。ぜひ、そのようなときには、うれしいことや充実していること、今後楽しみなことなど、ポジティブな感情に目を向けてみてください。

関連記事
「1日2個、切ってスプーンで食べるだけ」メンタル不調に効く身近な"あの食べ物"
「誰でも簡単にぐっすり眠れるようになる」睡眠に悩む人に専門医が勧める就寝前の"ある習慣"
「健康診断は不要である」そう断言する和田秀樹さんが、これだけは…と勧める"2つの検査"
「まあ、いいや…」和田秀樹が警鐘"40代から一気に脳の老化が進む人"の危険な兆候
シフト勤務の人は要注意…「なんとなくいつも調子が悪い人」がまず疑うべき"ある病気"