子どもには、特定の養育者との「結びつき」が必要

子どもの健全な成長には「愛着(アタッチメント)」という、親などの養育者との間に築かれる心理的な結びつきが大切で、養育者が頻繁に子どもを抱っこしたり触れ合ったりしながら育てることで築くことができるといわれている。しかし、虐待を受けたり、主な養育者と離れてしまうとうまく愛着形成ができず、過度に人を恐れたり、不安定になるなど、精神面の発達に影響を及ぼすことがある。

現在、親と暮らせない子どもの約8割は児童養護施設や乳児院などの施設で暮らしているが、アタッチメントは特定の大人との精神的な結びつきから生まれるものなので、シフトで担当者が交代したり、職員の退職などで養育者がかわる施設では、アタッチメント形成が難しいことも多い。塩崎さんは、家庭にできるだけ近い形で子どもに愛情を注ぐためには、里親を増やすしかないと思うようになったという。

「人間として大事な時期に、親や親代わりの大人からの愛を受けずに、健全な発育ができるわけがない。これは本気でやらないといけないと思った」と、里親について真剣に考え始めた理由について塩崎さんは振り返る。

週末だけ、夏休みだけの預かりも

里親は、法的に親子関係になる養子縁組とは違い、子どもの親権者は実の親のままだ。子どもは、親の環境が整った時点で親元に帰るか、一般的に18歳になった時点で自立することになる。とはいえ、この「一定期間」というのもいろいろな形がある。

例えば夏休みや週末のみ、一時保護の間のみということもあれば、数年にわたることもあり、いろいろな形態があり得る。必ずしも「一度受け入れたら子どもが18歳になるまで面倒をみなくてはならない」わけではない。「自分はこの年齢(71歳)なので、小さい子どもが18歳になるまで面倒を見るというのは考えられないが、ここ数年ぐらいの間に、できる範囲のことができればいいのかなと思っている」と塩崎さんは言う。

「『このままだと虐待につながるおそれがある』という状況の家庭から、子どもを一時的に預かるといった、予防的なやり方もあるでしょう。そんな時に役に立つことがあればと思っている。児童相談所で『誰か預かってくれる人がいないか』と探す時の、一人の候補者として考えてもらえればいいと思う」

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