自然の成り行きで日本料理が生まれた
私は、日本料理とは、日本だからこそ生まれた料理のことをさすと思っています。
自然の成り行きの中で自然現象としてこの国で生まれてきたものが日本料理なのです。
日本料理が日本料理であるためには、いろいろな要素、それこそ地形や気候などといった自然現象が大切なのですが、日本料理が日本料理であるために一番重要なのは食材です。
例えば、魚一つをとっても、日本は世界で類のない豊富な種類と質のいい魚が獲れて、我々はそれを自然に調理して食べてきたわけです。
それから稲作も日本料理には欠かせません。弥生時代に始まった稲作が日本中に広がり、それが主食になりました。
米作があったから、みそ・醬油を作ることもできたのです。
さらに冷蔵庫のない時代も長くあり、長期保存をするために食材を干したり、煮たり、漬けたり。また日本独自のみそや醬油といった発酵食品ができて、今でも欠かせない調味料として使っています。
このように生きるための知恵から日本料理が発展してきました。
さらに日本には、四季があったということも大きいと思います。
例えば芽吹きの春、生命が生き生きと育つ夏、収穫の秋、そして寒さをしのぎ、土の中でたくわえる冬……。気候はもちろん、それに伴って温度や湿度が変わることで、獲れるもの、採れるものが変わる。それによって調理法や保存法も変わってきます。
毎日同じように食べるものの用意をしていても、季節に応じて対応をしていかなければならない。そしてそれが積み重なってその土地の食文化になっていくわけですから、日本のこの自然現象があって、この日本食、和食、食文化が生まれ、現代に続いているということになります。
何よりもそこに住む人の身体にとって必要なもの。暑さや寒さに対して必要なもの。四季折々に応じてとれる食材が日本料理になり、それが日本の食文化につながってきたのです。