日本料理の懐石料理と会席料理の違いはややこしい。銀座小十・料理長の奥田透さんは「料理の内容よりもシーンの違いで覚えるとわかりやすい。懐石料理は茶を楽しむためのもの、会席料理はお酒を楽しむためのものだ」という――。

※本稿は、奥田透『日本料理は、なぜ世界から絶賛されるのか』(ポプラ新書)の一部を再編集したものです。

銀座小十料理長の奥田透さん。
提供=銀座小十
銀座小十料理長の奥田透さん。

「和」という文字には優しさやおおらかさが込められている

みなさんは日本料理というと何をイメージするでしょうか?

定食のようなものでしょうか?

それとも懐石料理や松花堂弁当のようなものでしょうか?

日本料理を日本で生まれた料理と定義するのであれば、寿司や天ぷら、蕎麦、焼き鳥だって日本発祥のものですから、こういった料理も日本料理といえば日本料理です。

そもそも、日本の昔の人たちは、自分たちが食べている物が「日本料理」だということは、特に意識していなかったと思います。

自分たちの周囲で獲れた魚、採れた山菜や木の実、そして自分たちが田や畑を耕して作ったもの、それらを当たり前に食べていたのではないでしょうか。

それから日本料理を和食とも言いますが、日本料理と和食は何が違うかというと、別に呼び方が違うだけで、これらは同じものだと思います。

それこそ昔の人は、ただ、「日本」を示すものとして、「和」という言葉を付けたわけです。和風という言葉もありますし、食事は和食、紙は和紙、お部屋は和室、着る物は和服、お菓子は和菓子、楽器は和楽器、牛肉は和牛……。和の付く言葉はいっぱいありますし、日本のことだってそもそも「大和」と呼んでいました。

和という漢字は、「なごみ、なごむ」とも読みますので、そういう日本を象徴する優しさやおおらかさといったものがこの文字には表現されているのではないでしょうか。

和服にしても、和室にしても、和が付く言葉には、「なごみ、なごむ」といったものが、自然に表現されていたのかなと思います。

そしてその延長に和食があるというわけです。

しかし、今現在、和の付くものが全部なくなりつつあり、私はそこに危機感を覚えています。この話は後程詳しくしたいと思いますが、和の付くもので、今、残っているものは、もしかしたら和牛くらいではないでしょうか(笑)。下手をしたら和食も今、なくなりかけています。