年間300匹の捕獲数を見込んでスタートしたが…

これまでの捕獲数は、以下の通りだ。

2018年(7月~)43匹
2019年 125匹
2020年 27匹
2021年 97匹
2022年1月(1カ月) 7匹

計画書には「森林内においてノネコの目撃頻度が増加」し、「早急にノネコを生態系から排除する対策がある」と記され、年間300匹の捕獲数を見込んでスタートした10年計画であったのに、実際にはこの程度しか捕まらない。

しかも、2021年に捕獲された97匹中、26匹の猫は「さくらねこ」だった。「さくらねこ」とは前回記事に書いた通り、不妊去勢手術を行った目印として耳先をさくらの花びらのようにV字カットされた猫だ。つまり、さくらねこには生殖機能がない。一代限りの命であるにも関わらず、捕獲されているのだ。

もちろん、その一代限りの命の猫が「アマミノクロウサギをどんどん捕食している」というのであれば問題だ。まるでそうであるかのように、ノネコ管理計画書には<ノネコ一頭が一日に摂取している餌の量の平均は378グラムと見積もられ、この量はケナガネズミとアマミノクロウサギでは1頭ずつ、必要になる>という論文が引用されている。

森にノネコがいないから街の野良猫を捕まえている?

しかし、これまで奄美大島からノネコを引き取ってきた獣医師の齊藤朋子氏は「体重4キロの成猫でキャットフードなら1日約90グラム前後が標準量」と述べている。また個人的感想になるが、アマミノクロウサギを間近で見ると、それなりの大きさがある。これを猫がつかまえ、闘いに勝利して頻繁に食するようにはどうしても思えない。言葉は悪いが、せいぜい交通事故によって道路に死んでいるアマミノクロウサギを捕食する程度ではないだろうか。

写真提供=どうぶつ基金
森の中でみつけたアマミノクロウサギ

そもそも本来は自然豊かな森を守るため、森の奥に生息する“野生の猫(ノネコ)”を排除するための計画だったはず。捕獲される猫に、さくら耳カットが増えているというのは、「森にノネコがいないから街の野良猫を捕まえている」と疑われても仕方がない。それが違うというなら、環境省は機密事項としている「ノネコの捕獲場所」を明らかにするべきだろう。

そして冒頭に書いたノネコの収容施設「奄美ノネコセンター」では50匹が収容上限にもかかわらず、譲渡可能期間(殺処分へのカウントダウン)は、たった1週間しか設けられていない。例えば今日猫が収容されたとしたら、1週間後の今日は殺処分してもいいとされるのがノネコ管理計画だ。せめて収容施設が半分程度埋まる25匹までは「殺処分を待つ」というのがなぜできないのだろうか。