「増えていようが減っていようが、マイナスになる」
さらにこうも言っていた。
「世界遺産の価値というのは、顕著で普遍的な価値といわれる。その一つにアマミノクロウサギをはじめとするこの地域にしか棲んでいない生き物というのがある。その数が増えていようが減っていようが、個体が食べられている。それ自体が世界自然遺産登録にマイナスになると我々は感じています」
この言葉だけでもわかるように、「ノネコ管理計画」の遂行は、「世界自然遺産登録」と深く関与していたのだ。
私は犬猫を飼育した経験がないのでなじみがなかったが、世界ではノネコのような外来種(もともとその地域にいなかったが、人の活動によって他の地域から入ってきた生物)は100%排除・駆除する考え方が主流だ。実際にユネスコの諮問機関の役割を持つ国際自然保護連合(IUCN)が作成した「世界の侵略的外来種ワースト100」にノネコは選ばれている。
最大の問題は「ノネコが捕まらない」
ここで疑問をもつ人もいるかもしれない。昨年、奄美大島は世界自然遺産登録が決定したのに、いまだにこの計画は続いているからだ。ノネコ管理計画の策定に関わったある専門家は、奄美大島が世界自然遺産に登録される前にこのように述べていた。
「(奄美大島が世界自然遺産に登録されたら)数年後にIUCNの監査が入りますから。その時に猫をどれくらいコントロールできているか、それ以外の外来種のリスクは発生していないかが重要です」
要するに世界自然遺産の資格を剥奪されないためにも、また予算を集めるためにも、この計画をこれまで通り遂行していく必要があるということなのだろう。
だが、冒頭から述べている通り、ノネコ管理計画は科学的根拠が弱い。その決定的ともいえる根拠は、「ノネコが捕まらない」ことだ。