一人勝ちがもたらす悪影響とは…

ただし、懸念点もある。

今回3案件の入札は、いずれも①「価格点」と②「事業実現性に関する得点」をそれぞれ120点満点で評価して落札業者を決めた。

三菱商事を中心とする企業グループは①「価格点」で圧倒し、3つの案件でいずれも120点満点を獲得した。2位以下をいずれも26点以上引き離して圧勝した。

一方、②「事業実現性に関する得点」は2位と競り合い、敗れたケースもある。つまり、三菱商事側が圧倒的なコスト競争力を背景に3案件の事業権を獲得したと言える。

この入札の結果、競合相手であるレノバ社は、大規模な投資をしてきたにもかかわらず、投資資金を回収できず、今期は赤字転落する格好となった。11月25日には一時5950円をつけた株価は、入札結果の発表後にストップ安が続いた。現在は1400円台で推移している。入札前の4分の1程度にまで急落したことになる。

三菱商事側が圧倒的なコスト優位性を示したことが、かえって他社には洋上風力への投資がリスクになるという認識が広がる恐れがある。三菱商事に比べれば体力では劣る新興企業にとっては参入が厳しい市場となってしまったと見ることもできる。

今後の洋上風力市場には、ENEOSをはじめとする大手各社も参入を予定している。彼らにとっては三菱商事側が今回設定した価格はかなりハードルが高いだろう。

再エネの普及には、市場が健全に機能していくことが不可欠だ。三菱商事側が示した価格の圧倒性が、市場における競争を排除する方向に働く恐れは十分にあり得る。一人勝ちによる寡占状態が続けば、せっかく最初にブレークスルーが起きたにもかかわらず、これ以上の競争が起こらずコストが下がらないという事態も考えられるからだ。

この悪循環が起これば、結局は私たちの暮らしに跳ね返ってくる。日本の電気代が高止まりし、再エネ普及が進んでもその恩恵を受けられない恐れも想定しうる。

GEとアマゾンから読み解く“低価格”の秘密

そもそもなぜ三菱商事の企業グループは、競合他社より圧倒的な低価格で落札することができたのだろうか。

その理由は、三菱商事の企業グループにGEやアマゾンといった米国企業が加わっていることから読み取ることができる(表面的には三菱商事が冠で入札を行ったものの、実態としては日米企業連合が案件をとったとも言える)。

洋上風力の肝である風車部分は、すべてGE製が導入されるだろうという点がポイントだ。複数のエリアで落札することを前提に、調達量を増やしてコストを下げる戦略を採った。圧倒的なコスト安実現の背景には、GEの協力なくしては成立しない。GEとしても今後日本の洋上風力市場がスケールしていくことを織り込んで協力したと見るのが適当だ。