対象者の人物相関図がすべて可視化される

では、スパイウェアで集められた情報はどのように使われるのか。

もちろんメールやSNSのやりとりが見られるのは当然のことながら、実際にデモを見て、コンテンツの重要性はもちろんだが、メタデータが非常に有効な情報なのだということだ。とくに情報機関にとっては、メタデータが重要な価値を持つ。

メタデータとは、さまざまなファイルなどの情報データ、つまり、メッセージ一つを例にすると、メッセージの内容よりも、いつ誰が誰とどういった通信手段で、どのくらいの時間やりとりをしたのか、という個人の通信活動に関わるデータのことである。

それによって、世の中に、どんな人たちのネットワークがあるのかを可視化できる。やりとりしている人たちの相関図ができ上がるというイメージである。

メタデータによる個人やグループのコミュニケーションや情報の往来のネットワークも可視化できる。

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最終的には、そこに諜報ちょうほう員などが現場で集めたヒューミント(人的インテリジェンス情報)を加えて、ターゲットなど、対象者のネットワークを把握しているのである。そのデータベースを見れば、誰が誰とつながって、いつ、誰と、どこで、何をしているのかが一目瞭然である。

IT業界の関心は5Gから6Gへ

2019年から、世界で本格的に導入が始まった5G(第5世代の移動通信システム)。新型コロナ禍で5Gの導入も話題性に欠けてはいるが、じつはIT業界はもう6Gに向かっている。

アメリカが2018年に5Gを試験的にスタートさせた。そして翌2019年の4月には、スマートフォンで使える5G通信サービスを、アメリカと韓国がスタートさせた。中国でも、同じ年の11月から、中国移動と中国聯通、中国電信の三大通信事業者が5Gの通信サービスを開始している。

この5Gをめぐっては、中国のファーウェイが、5G通信機器を安価に販売してシェアを世界に広げたこともあって、通信インフラをめぐる米中の対立につながっていった経緯がある。

5Gは、通信中のやりとりの遅延が1ミリ秒(1000分の1秒)以下になり、電話などでも声が届くのにタイムラグはなくなる。さらに、1平方キロメートルあたり、100万台の機器を同時に接続できる多接続が可能で、データ通信も安定し、電力消費量も低い。

そしてすでに5Gの次世代の通信規格(6G)について開発がはじまっているのだ。