国家を超えうるGAFAに高まる警戒感
いまではGAFAに代表されるような大手プラットフォーマー(データのインフラ事業者)は巨大に、強大になりすぎて民主主義にとって脅威なのではないかという懸念が出てきた。
そのため、ヨーロッパではデータの扱いを厳しく規制するGDPR(EU一般データ保護規則)が制定され、アメリカでもGAFA規制の必要性が議論されている背景には、そうした国家を超えうる存在への牽制の意味がある。
最近、アップルやグーグルがウェブ上でのトラッキングに規制をかけてきたのはこのような不安や不満に対応したものに他ならない。
インターポール時代には、どんなアプリでもデータを監視できる「監視ソフト」についても注目していた。監視ソフトとはスパイウェアと呼ばれるもので、現在ではかなりの数の国で利用されている。
これまで政府機関自らが巨額の費用をかけて監視技術を開発してきたが、いまでは、民間が作ったシステムで同様の監視が可能になっている。この分野においては世界でも数社だけが、政府機関に限って監視ソフトを販売している。なお、サービスを提供している会社はどれも、公的機関以外には販売していないという。
ターゲットの脳に入り込める民間の監視ソフト
私がインターポールにいる時、実際に、ある民間の監視ソフトのデモを見る機会があった。
そこでは、まずビデオが流され、「相手の頭の中をすべて覗く」といった具合でプレゼンテーションが行われる。
そして、スマホに入った電子メールからメッセージ、電話、写真、電話帳、通信履歴、検索履歴などすべてにアクセスが可能になる状態が画面に映し出される。つまり、ターゲットになった人の行動がすべて丸裸になるわけだ。
本当に、その人のすべてが見えるのである。脳に入り込むといったイメージだ。
それを可能にするサービスを提供しているのが民間企業であるというのが現実だ。
いま広く知られているのは、イスラエルのNSOグループという会社が販売する「ペガサス」や、イギリスのガンマ・グループが提供する「フィンフィッシャー」というシステムである。ただこれらは、数十カ国で利用されており、あまりに強力なスパイウェアなため、製造会社のある国の政府が、誰に販売するのかについての判断に影響力を持っていると言われている。
NSOのスパイウェアについては、米商務省産業安全保障局(BIS)が、2021年11月に「エンティティリスト」(米製品輸出禁止対象企業一覧)に追加したことが発表されている。その事実からも、同社のシステムの実力がわかる。