「コロナに真正面から立ち向かえるのは医者だけ」
オミクロン株は重症者の割合は少ないが、それなら医療従事者にとって扱いやすい疾患かというとそうでもないという。會田医師は「すごいのがきたなって感じ」と話す。
「第6波はコロナという単一疾患を診ている感じが全くないんですよ。第5波はステロイドを増やす、この薬はいつまで続けるかという二択が多かったのですが、今は合併症や基礎疾患を考慮しながら治療の選択をしていかなければなりません」
実は會田医師は、コロナ発生当初、ベトナムの医療機関で働いていた。ベトナムではコロナ専門病院でしかコロナを診ることができなかったため、日本に帰国し、出身地である神奈川県で地域医療に貢献したいと思ったという。そして湘南鎌倉総合病院が運営するコロナ臨時病棟で人手を募集していたため、手を挙げたのだった。
「コロナに真正面から立ち向かえるのは、医者という職種だけですよね。ほかの職種ではできないことだから、医者としてコロナの診療に加わりたいと思ったんです。でももともとは3カ月経ったらベトナムに戻る予定で来たんですよ。荷物もまだベトナムにあるくらいで。国の行き来が簡単でなくなり、戻れなくなって、出張が続いている感じです。あれからもう2年も経つんだなという気がしますね」
コロナは「弱いものいじめが大好きな病気」
いってみれば“外から”きた医師であるが、今や日本最大級のコロナ病床をもつ場所でリーダー的役割を担っている。
「僕は最初からコロナを怖いとはあまり思っていませんが、弱いものに牙をむくというか、弱いものいじめが大好きな病気ですよね。振り返ればどの波も特徴があり、その時々の武器(薬や治療法)も違いました。だから同じことを繰り返しているという感じではなく、試行錯誤しながら治療はどんどんうまくなってきていると思います。医者としての経験は確実に増えました。
今後は治療薬が定まり、“コロナと共存”が当たり前の世界になれば、いろんな規制が撤廃され、コロナ専用病院なんていらなくなる。僕たち絶滅危惧種の職業ですよ。でもそれでいいと思うし、これが最後の戦いだと思ってやっています」
ただ現在は第6波のピークを迎えるところで、これを越えるにはまだあと1~2カ月かかると、會田医師はみる。