伊、仏は外交的ボイコットに消極的

五輪を取り巻くボイコットといえば、1980年に開催されたモスクワ夏季五輪の例がある。これは、当時のソビエト連邦によるアフガニスタン侵攻を是としない米国が同盟国に呼びかけ、選手の大会出場を含む、いわば「全面ボイコット」を行った。

その次、1984年の夏季大会は、米国のロサンゼルスで実施された。この時は、モスクワ大会の意趣返しとなり、旧ソ連をはじめ、旧東ドイツほか当時の東側諸国が出場をボイコットした。

北京大会の2年先には24年の夏季パリ大会、4年後にはイタリアのミラノ周辺で冬季大会がある。自国開催を控えるフランス、イタリアにとって、中国とその友好国らによってボイコットに踏み切られるのは避けたい。イタリアは先進7カ国(G7)の国で唯一「一帯一路」に協力的とあって、外交的ボイコットには消極的だ。一方のフランスは、先の東京大会へはマクロン大統領が訪日したが、さすがに北京へは中国の人権問題もあって訪中は難しい。スポーツ担当の閣僚を送る考えを示しているが、まだ正式には決まっていない。

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かつての「ボイコット合戦」が起きるのか

その先には、外交的ボイコットに踏み切った米国・ロサンゼルスでの28年夏季五輪がある。6年先の米中関係はどうなっているのか予想できないとはいえ、両国間の政治的な駆け引きが収まっているとは思えない。

先の東京五輪では、日本の一般市民の間で「IOCが商業主義に傾き過ぎている」との批判も多かった。そして北京では五輪の場に「政治」が持ち込まれ、開催国の「国力誇示」の機会として使われそうだ。こうしたいびつな五輪は本来のスポーツの祭典からかけ離れ、競技で競いたい選手ら、そして戦う若者たちに声援を送る各国の人々を裏切ることにはならないのか。

「偉大な中国」を誇示しようとするあまり、大会が「選手や競技は二の次」になってはいないか。五輪憲章にある「より速く、より高く、より強く――共に」というモットーを忘れた北京五輪がどのような大会として出場選手や世界中の人々の記憶に残るか、習近平政権は改めて考えるべきだろう。

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