恒大の一部デフォルトは中国政府の差し金か

その恒大集団が2020年から経営難に陥り、2021年末、ついに部分的なデフォルトに陥りました。果たして、これは中国バブル崩壊の引き金になるのでしょうか。

結論からいうと、そうはならないと思います。もっと正確にいうと「そうならない方向に、中国政府が誘導していく」と思われます。なぜかというと、どうも恒大集団の部分的デフォルトは、中国政府がそうなるように仕向けた可能性が高いからです。

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恒大集団のイケイケな手法は、これまでは習近平の方針(不動産主導での経済成長)と合致していました。しかし現在のように、一部の富裕層以外に手が届かないところまで住宅価格が高騰するのは「今後の方針」とかみ合わない。

習近平は、2018年の憲法改正で国家主席の任期を廃止し、「生涯国家主席」をめざしているといわれます。そのためには、中国人民全体から幅広く支持される必要がありますが、現在の極端な格差社会(富裕層=純金融資産保有額が100万ドル以上の人々=人口がわずか0.5%)のままでは、支持基盤が脆弱ぜいじゃくです。そこで彼は2021年夏より、新しいスローガンを打ち出しました。それが「共同富裕」です。

不動産融資規制は「共同富裕」を実現させるポーズ

社会主義市場経済を導入してからの中国の経済指針は、先富論(豊かになれる者から先に豊かに)→小康社会(ややゆとりのある生活の実現した社会)でした。しかし2021年7月の中国共産党創立100周年祝賀記念式典で、習近平は「小康社会の全面的完成」を宣言し、次なる目標として「共同富裕」を掲げたのです。

共同富裕とは「貧富の差をなくし、みんなで豊かになる」ことです。確かに一部の富裕層だけでなく、中国人民すべてを豊かにすることができれば、習近平の支持基盤は盤石になり、生涯国家主席への道も夢ではなくなりそうです。しかし、そのためには今の不動産バブルは行き過ぎました。価格が高騰しすぎ、もはや住宅は、富裕層と一部の中間層以上の人間にしか手が出せない代物になってしまいました。このままでは、人口の大多数を占める一般勤労世帯の支持は得られません。

だから習近平は、恒大集団を不動産融資規制で追い込む姿勢を、ある意味「中国人民に見せつけた」と考えられるのです。恒大集団は中国バブルの牽引役でしたから、これは「過熱しすぎた不動産市場を少し冷ますぞ」という中国政府からのメッセージになります。これをすると、バブルが沈静化する反面、富裕層が損をすることにつながりますが、いいかえれば、それは「富裕層にある程度、損をさせつつ、住宅価格を一般民衆の手の届く所まで下げてくれる」ことにもなります。これぞ、まさに共同富裕。習近平はこうして、生涯国家主席に向けての民衆の求心力を高めようとしていると考えられるのです。