「時代遅れ」と揶揄されても

バフェットがポリシーとしている「能力の輪」も同じことです。バフェットの投資も「自分が理解できる、よくわかっている分野」に絞り、その外には安易には出ないということを自らの基本にしています。

桑原晃弥『ウォーレン・バフェットの「仕事と人生を豊かにする8つの哲学」』(KADOKAWA)

そのため、先述したように人気のテクノロジー企業やIT企業に関しては、どんなに市場が過熱しようが決して手を出さず、「時代遅れ」といわれることもありましたが、最終的にはバフェットが正しかったことが証明されています。

これは「テクノロジー企業やIT企業には手を出すな」という意味ではありません。その分野に詳しく、将来性を正しく評価できるならどんどん投資すればいいのですが、その分野が自分の能力の輪の中にないとしたら安易に手を出してはいけないという意味です。

投資の世界には基本原則を揺るがすような誘惑や、能力の輪からつい出たくなるほどの魅力的な誘いがたくさんあります。誘惑に負けて誘いに乗るか、それとも決めた原則や能力の輪をしっかりと守ることができるか。どちらを選ぶかで投資の成果が決まるというのがバフェットの考え方です。

大切なのはIQの高さや、能力の輪の広さではなく、基本的な原則や能力の輪にどれだけ忠実でいられるか――それは、ビジネスの世界での成功のヒントでもあるでしょう。

無理に投資を行うのは流儀に反する

1969年、バフェットはグレアムの会社を辞め、オマハに戻った時から続けていたパートナーシップを解散することを表明しました。そこに至るまでバフェットのパートナーシップは素晴らしい運用実績を上げ続けていましたが、それ以前の「ゴーゴー時代」を含め、バフェットが関心を示す企業、利用できるチャンスは確実に減っていることをバフェットは感じていました。とはいえ、パートナーシップを運営し続ける限り、投資を行う必要がありますし、みんなが満足する成績を上げ続ける必要もあります。

しかし、投資のチャンスがなく、優れたアイデアもないにもかかわらず、無理やりに投資を行うのはバフェットの流儀ではありませんでした。