IT企業への投資を長年避けてきたバフェット

自分にとって詳しい分野があり、その業界の企業について正しい判断ができる能力があればその能力の輪の中で投資を行う。一方、自分がよくわからない分野については、いくら株価が魅力的であろうが、人気の銘柄であろうが、安易に手を出してはいけない。それが、バフェットのいう「能力の輪の中で」という意味です。

木製本棚に並ぶ古書
写真=iStock.com/Bet_Noire
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今でこそバークシャー・ハザウェイの保有銘柄の1位にはアップルが君臨していますが、バフェットは「能力の輪の外にある」として長くIT企業への投資を避けてきました。そのため周囲から揶揄やゆされることも少なくありませんでしたが、そんなことを気にせずに「能力の輪」にこだわり続けたことが、バフェットに不動の成功をもたらしたともいえます。

理解していないものには決して手を出さない

投資で成功するためには何が必要なのでしょうか。高いIQか。幅広い専門知識か。

バフェットの「能力の輪」でいえば、その輪が広ければ広いほどチャンスは広がり、大きな収益を上げることができるのではないかとも思えますが、バフェットはその意見には与しません。「ウォール街では誰もが少なくとも140以上のIQ(知能指数)を持っている」(『ウォーレン・バフェット 華麗なる流儀』ジャネット・タバコリ、東洋経済新報社)とバフェットがいうように、金融の世界、投資の世界に高いIQを持つ人間はいくらでもいます。

だからといってIQの高さで成果が決まるわけではありません。なぜなら、「投資というゲームでは、知能指数160の人間が130の人間に必ず勝つとは言えない」(『ウォーレン・バフェット 自分を信じるものが勝つ!』ジャネット・ロウ、ダイヤモンド社)からです。

では、何によって決まるのでしょうか。バフェットはこう言い切っています。

「最も重要なのは、自分の能力の輪をどれだけ大きくするかではなく、その輪の境界をどこまで厳密に決められるかです。自分の輪がカバーする範囲を正確に把握していれば、投資は成功します。輪の面積は人の5倍もあるが境界が曖昧だという人よりも、裕福になれると思います」(『ウォーレン・バフェット 自分を信じるものが勝つ!』)