自動車メーカーだけでなく他業種にも影響を与える
世界経済の歴史を振り返ると、産業の創出、再編、およびその構造転換は、何かと何かの新しい結合を実現した企業家の存在が起爆剤になった。今後の展開として期待したいのが、国内企業であるソニーが画像処理半導体とEVの結合に取り組むことによって、従来の発想では環境の変化に取り残されるという国内企業の危機感が高まることだ。
ソニーがVISION-Sの実用化を急ぐことによって、ソニーと提携する自動車メーカーが増えたり、ソニーのEVを受託生産する企業が増えたりする可能性は排除すべきではない。ソニーが自動運転技術の実証実験を重ねることは、自動車メーカーだけでなく国内の半導体メーカーや他の業種の企業に新しい取り組みを志向させる要因になるだろう。
新しいことに取り組む企業の増加が、産業構造の転換など経済の新陳代謝を高める。ソニーがVISION-Sの実用化を真剣に目指し始めたことが、より多くの人のアニマルスピリットを刺激し、わが国経済の潜在成長率の向上につながることを期待したい。