若者の安価な旅行先になりつつある日本

彼に対し、私はちょっと意地悪な質問をしてみました。「東京の物価が高いって言うけど、今、東京でラーメン食べたらいくらくらいすると思う?」。それに対し彼は、「NYで食べると1500〜2000円くらいだから、高い東京だったら2500〜3000円くらいするんじゃない?」「800〜1000円だよ」。私のこの回答に対し、ものすごく驚く彼の顔が大変印象的でした。

その後、実際に彼は奥さんと子供と東京旅行を久々に敢行し、「安くて本当に快適だった」と大変満足げでした。

このエピソードが象徴するように、この約20年の間に、東京も含めた日本は、欧米先進国の大都市部に比べると、大変物価の安いエリアになった(なってしまった)のです。

日本では昔からバックパッカーが安価な旅行をする場所として、東南アジアが選ばれることが多かったですが、今、欧米先進国やアジアの先進エリアの主に若者が、安価な旅行をする先が実は日本になりつつあるのです。

「駐在員にとって物価の高い都市」2位になるカラクリ

しかし、世界の物価を比較した様々な民間企業の調査結果を見ると、何故か東京の物価が高く算出されているものばかりを目にします。

原田曜平『寡欲都市TOKYO 若者の地方移住と新しい地方創生』(角川新書)

例えば、組織・人事コンサルティング会社のマーサーは、世界生計費調査の2019年版を発表しました(世界500都市以上で、住居費や食料、衣料など200品目以上の価格を調査したもの)が、それによると、駐在員にとっての物価の高い都市2位に東京が入りました(ちなみに、トップ10のうち8つがアジアの都市)。

香港やシンガポールの家賃や物価が高いのは誰しもが納得できると思いますが、NYより東京が物価が高いというのは、恐らくNY駐在の日本人、あるいは、NYに旅行に行く日本人の誰もが納得できないのではないでしょうか。

この調査を否定するつもりはありませんが、この調査は多国籍企業や政府機関が海外駐在員の報酬や手当を設計するために行われたもので、ここからは私の仮説になりますが、庶民の暮らしではなく港区など欧米外国人が住んでいるエリアのスーパーあたりで統計をとっている可能性があります。

品目もラーメンなどではなく、カマンベールチーズやワイン、高級パンを日用品の中心と捉えると、関税が高い日本の物価が欧米より高く算出されることになります。指標を取る品目が偏っていたり、例えば、欧米外国人の金融業界の人間が多く住んでいる港区だと家賃も高く算出されてしまいます。

他の欧米企業による調査も同様のものが多く、あくまで欧米人のエリートが日本で欧米と同じ高級な暮らしをする費用を算出するために調査されている可能性があり、それはそれで彼らにとっては意味のあるものだと思いますが、そのまま日本人が客観的事実として受け入れてはいけません。