「仕送りは打ち切るわ」主人公が親から受けた宣告

ドラマのシーズン1の冒頭のシーンは、主人公のハンナとその両親が久しぶりに一緒にディナーを食べているシーンから始まります。最初は娘の近況を聞いていた両親でしたが、急にハンナの母親が話を切り出します。「仕送りは打ち切るわ」。

その後、ハンナとお母さんは言い合いになります。「でも私は無職よ」「大学卒業後2年も養った。十分だわ」「不景気で友達も皆、親がかりよ。(中略)一人っ子で浪費もしないのに一方的すぎる」「うちに余裕はないの。(中略)家賃に保険代、携帯代まで親持ちよ」「(中略)友達のソフィーは親に援助を断たれて転落よ。頼る人もなく二度中絶。私の夢が叶う直前なのにバッサリと手を切るわけ?」「もうお金は出せない」「いつから?」「今すぐよ」。

コロンビア大学出身でも十分に稼げない

多くの日本人には想像できないかもしれませんが、実はこの冒頭のシーンが、アメリカの大都市部の若者たちのリアルを象徴しているのです。コロナで日本以上の多数の死者を出した現在のアメリカでは、この若者の状況がもっと深刻化しているかもしれません。

世界中、そして、アメリカ全土から人が集中し、物価が上昇し続け(日本が長く続いたデフレで物価が落ち込み続けたのとは対照的)、超名門大学であるコロンビア大学出身の主人公のハンナでさえ、高い家賃や保険代を自分で出すことができません。超格差大国アメリカで、中流階級であるハンナの親も余裕がなくなり(両親2人とも大学教授なので、日本の感覚で言えば「上流」家庭と言えるかもしれませんが、物価の高いアメリカの大都市部では必ずしもそうではありません)、大切な一人っ子の娘への援助の打ち切りを申し出るに至ったわけです。

このドラマにはハンナ以外にも、様々なタイプの若者たちの「生きづらさ」や「転落」がリアルに描かれています。これがアメリカの「今」なのです。