雪景色の増上寺で普段、非公開の施設も紹介
少し増上寺を説明しよう。同寺は浄土宗の大本山である。14世紀末に開かれ、江戸時代に入ると徳川将軍家の菩提寺として栄華を極めた。現在の増上寺は東京プリンスホテルとザ・プリンスパークタワーに挟まれた敷地だが、かつては東京タワーやプリンスホテルを含む芝公園全域が境内地だった。
当日はこうした寺の歴史などを、増上寺の若手僧侶が、先述の近藤さんに境内を散策しながら解説。その様子がオンラインで配信された。Zoomの投票機能を使ってクイズを出したり、視聴者からメッセージをもらって読み上げたりするなどの双方向のやりとりも盛り込まれた。
施設入所者にたいする祈願の読経も実施され、お札が授与された。高齢者の元には記念品として増上寺名物の「勝運御守」が郵送された。
だが、当日は想定外の大雪で、気温は0度を切るという想定外の「ハプニング」。新年にもかかわらず、増上寺の一般参拝者はほとんどみられず、案内人の2人だけが雪の積もった境内を案内するというシュールな光景が配信された。リアルなツアーであれば中止になっていたに違いない。オンラインだから実現できたことだ。
雪景色だけではない。普段、非公開の施設が紹介された。そのひとつが、日比谷通りに面する三解脱門(三門、国の重要文化財)の2階の内部である。すぐ外は喧騒のオフィス街なのに、三門の中は暗く、静寂に満ちている。大きな釈迦三尊像、十六羅漢像などの映像が僧侶の解説とともに配信された。
通常は有料公開の徳川家の廟所(墓所)へも入っていく。廟所は、歴代将軍のほか夫人や子女らを含めると計38人が祀られている。将軍は2代秀忠、6代家宣、7代家継、9代家重、12代家慶、14代家茂の6人だ。廟所は将軍ごとに拝殿と本殿などの建築物がついた、まるで日光東照宮のような絢爛豪華な施設であったとの解説があった。
廟所のおおかたは太平洋戦争での空襲で焼けてしまったが、徳川家光の三男綱重の御霊屋にあった建物の一部が、境内にある水盤舎の屋根に使われていることなど、知られざる逸話が説明された。
大殿の中にも入っていく。大殿は増上寺の中枢だ。やはり先の大戦での空襲で焼けてしまい、現在の大殿は1974(昭和49)年に建造された。近藤さんが、参加者700人を代表してお賽銭を投げ、手を合わせて祈りを捧げた。