暴落した時が明暗を分ける

また、投資信託で大きな資産を作って億り人になろうということであれば、基本は積立投資であったとしても、どこかの時点では、やはりリスクを取る覚悟が求められます。私が今までに取材した人たちの中で、投資信託によって大きく資産を増やした人は多かれ少なかれどこかの時点で覚悟してリスクを取っています。

大江英樹『となりの億り人』(朝日新書)

具体的に言えば、少しずつ積立投資をしていたとしてもリーマンショックのような大幅な下落が起きた時には普段の積立金額よりもかなり多くの金額を投資することです。もちろんそのためには資金が必要です。積立投資の場合は毎月一定金額が銀行口座から自動的に引き落とされて購入します(場合によっては給与天引きという場合もあるでしょう)。ところが少しまとまったお金ということになると給料からでは無理ですから、それまで預金などの形で蓄えていたお金を投資に振り向ける必要が出てきます。これはとても勇気のいることです。

そうでなくても市場が大きく下落している時は不安な気持ちに苛まれます。売らずにじっと辛抱するだけでもかなりの忍耐力が必要でしょう。ましてやそこで新たにまとまった資金で投資するというのは相当な勇気が必要です。でもそれをしなければ資産を大きく増やすことはできません。いつの時代でも大きな資産をこしらえた人というのはそれが投資であっても商売であってもどこかの時点で何らかの大きな勝負を何度か経験してきています。リスクを覚悟しない限り高いリターンは得られないというのは永遠の真実だからです。したがって大事なことの2番目は「あなたはリスクを取れる勇気がありますか」ということなのです。

ずっと持ち続けることができない人が多い

投資信託を使って長期に資産形成する場合、大切なことの3つめは市場から出たり入ったりせず、「市場に居続けること」です。出たり入ったりするというのはどういうことかというと、売買を繰り返すことを言います。これに対して「市場に居続ける」というのは買った投資信託を売らずに持ち続けることです。ところがこれができずに売買する人は結構多いのです。

よく、「じっと持っているだけじゃあ能がない。高い時に一旦売っておいて安くなったらまた買えば良いじゃないか」と言う人がいますが、実際にはそんなにうまくいくわけはありません。高い時は「もっと上がるんじゃないか」と思って売りそびれるのはよくあることですし、逆に下がると「まだ、もっと安い値段で買えるんじゃないか」といった気持ちになりがちですから、そんな絵に描いたようにうまく売買などできるはずがないのです。たまたまできたことがあったとしてもいつも100%成功することはまずあり得ません。