過去にも燃料制約を実施していた事実が明らかに

昨冬に電力危機が叫ばれたこともあり、政府や委員会に参加する専門家も、そうした危機が生じないよう細心の注意を払って議論を進めてきた。それだけに今回の燃料制約は衝撃と言うほかない。

無論、これが一過性で、今回たまたま4電力で生じたのであれば、そこまで大きな問題ではない。しかし燃料制約が頻繁に行われていたのであれば、これは構造的な問題と言える。

残念なことに、委員会では、過去にも電力会社が数件燃料制約をかけたことが公表された。専門家が念頭に置いていた前提が崩れるほど、構造的な問題を日本の電力セクターが抱えていることが明らかとなったのだ。

これまでは運よく大きな問題につながらなかっただけで、日本の電力供給がこの4電力を中心に電力危機を招くリスクが内在していることに他ならない。今後、特にLNGを巡る国際動向が不安定になることも想定されるため、深刻度はより高まるだろう。

燃料制約の先には電力危機が待っている。内生的であれ外生的であれ、大きなショックが加われば最悪の事態が起きるシナリオがそこにある。

日本の電力セクターが抱える問題点

燃料制約の問題は、日本の電力セクターが抱える問題点を如実に示している。

一つ目は火力発電の老朽化だ。今回の燃料制約も石炭火力の故障が要因として挙げられた。日本国内には古い火力発電施設が依然として多く稼働しているのだ。特に40年以上も稼働を続けるものは老朽火力と呼ばれる。

経産省の資料によると、1979年以前に建設された石炭火力の数は22基ある。これに加えて2020年代にはさらに22基が老朽火力に加わる。基数ベースで1割以上、2020年代には約3割が老朽石炭火力になる。こうした老朽石炭火力は旧式の非効率な火力発電所ということもあり、段階的廃止対象ともなっている。

これは老朽化した石炭火力の例だが、知られていないのは、閉じる予定のこうした老朽火力が、いまもなお日本を支えているということだ。

2011年の東日本大震災後に電力セクターを支えたのは老朽火力の稼働だった。直近でも今冬の電力不足に対応すべく、発電会社大手のJERAは老朽化で長期停止中だった姉崎LNG火力発電所5号機(千葉県市原市)を補修の上、2021年1月に再稼働させる。

写真=時事通信フォト
JERA横浜火力発電所(神奈川県横浜市鶴見区、2020年10月24日)

しかし古いだけあって故障リスクも相対的に高い。今回の九州・中国両電力の燃料制約では、同時期に老朽火力で故障が起きたことも要因となった点を考えれば、同様の事態は今後も起こり得るリスクであると言えるだろう。